TECHNICAL MANUAL — 営農技術解説

水稲再生二期作で1t/10a実証

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科目: 作物(水稲) / 栽培区分: 共通(試験は化学肥料を用いた慣行施肥)

結論:一期作700kg+二期作300kgで合計約1t/10aを実証

農研機構と株式会社ユーアスは、福岡県豊前市の現地ほ場で、極早生品種「つきあかり」を4月に移植する再生二期作に取り組み、一期作目で約700kg/10a、二期作目で約300kg/10a、合計約1t/10aの多収と良食味の両立を実証した。再生二期作は一度の移植で二度収穫できる技術で、二期作目に必要な苗箱・育苗・耕起・代かき・移植の費用が不要になるため、単位重量当たりの生産費削減が期待されている。

ただし、どの品種でも使えるわけではない。移植の早限は気温と用水確保の時期に左右され、地域によって異なる。さらに二期作目の稈(かん)長は一期作目より必ず短くなり、品種によっては米や麦で一般的な自脱型コンバインでは脱穀しきれず、大豆向けの普通型コンバインへの切り替えが必要になる。「収量を伸ばしたいが、機械まで変える余裕があるか」という設備投資の判断が、現場では避けて通れない論点になる。

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再生二期作とは何か

再生二期作は、一期作目の収穫後、切株から再生する「ひこばえ」を二期作目として栽培・収穫する方式である。水稲は本来、複数年にわたり生育し続ける多年生の性質を持ち、収穫後の切株から芽が出る。通常の二期作(苗を二度移植する方式)とは異なり、再生二期作は二期作目の移植作業そのものが不要になる点が特徴だ。地球温暖化の進行により、関東地方以西の暖地・温暖地で生育可能期間が延び、この再生二期作が可能な地域が増えていくとみられる。

原理:なぜ品種と移植時期で収量差が出るのか

今回の試験(2022〜2023年、福岡県筑後市)では、一期作目の移植時期(4月植え・5月植え)と品種(極早生5品種、早生〜中生3品種)の組み合わせで二期作目の収量や稈長を比較した。

  • 4月植え:二期作目の収量はすべての品種で250kg/10aを超えた。収量は籾数と強い正の相関を示し、登熟歩合や千粒重とは相関が見られなかった。二期作目の生育に必要な気温を確保できる期間が長いため、早晩性に関わらず籾数の多い品種で収量が高くなる。
  • 5月植え:極早生品種(ちほみのり・つきあかり・にじのきらめき・ゆみあずさ・とよめき)は二期作目も250kg/10aを超えたが、早生〜中生品種(あきだわら・ほしじるし・やまだわら)は150kg/10aを下回った。5月植えでは、一期作目の生育期間が長いほど二期作目の収量が下がる強い負の相関、二期作目の気温が高いほど収量が上がる強い正の相関が確認された。一期作目の収穫が遅れるほど二期作目が低温にさらされ、登熟が悪化することが原因と考えられる。

つまり、九州北部地方では一期作目を8月20日頃までに収穫できる移植時期・品種を選ぶことが、二期作目の収量を安定させる鍵になる。

稈長についても品種差がはっきり出た。一期作目はどの品種も自脱型コンバインの脱穀ロスの目安とされる55cmを超えたが、二期作目は「にじのきらめき」「あきだわら」「ほしじるし」で55cmを下回った。稈が短いと脱穀部のこぎ胴に穂が十分届かず、こぎ残しによるロスが増える。これが自脱型コンバインで収穫しづらい理由である。

現場での判断基準(チェックリスト)

  • 移植時期:用水確保と気温条件から、その地域での移植早限を確認したか
  • 品種選定:5月植え以降になる地域では、極早生品種を優先しているか
  • 収穫時期の目安:一期作目を8月20日頃までに収穫できる作期になっているか
  • コンバインの適合性:二期作目の稈長が55cmを超える品種か、普通型コンバインが必要な品種かを事前に判断しているか
  • 食味:炊飯米の食味評価(総合・硬さ・粒感)を事前に確認済みの品種か

品種別の収量・稈長傾向(2か年平均・所内試験)

品種区分

代表品種

5月植え二期作目収量

二期作目稈長

極早生

ちほみのり・つきあかり・にじのきらめき・ゆみあずさ・とよめき

250kg/10a超

にじのきらめき以外は55cm超

早生〜中生

あきだわら・ほしじるし・やまだわら

150kg/10a未満

やまだわらのみ55cm超

福岡県豊前市の現地実証では、「つきあかり」の稈長が一期作目82cm、二期作目67cmとなり、自脱型コンバインで収穫した際の脱穀部のこぎ残しによるロスは2%未満に抑えられた。炊飯米の食味は、通常の一期作「コシヒカリ」と総合評価で明確な差が認められず、二期作目はやや硬めで粒感がある特徴があったとされる。

慣行栽培と有機栽培での違い

今回の試験は、基肥・追肥として窒素・リン酸・カリを施用する慣行の施肥設計で行われており、有機栽培に関するデータは含まれていない。一般論として、有機栽培で再生二期作に取り組む場合は、二期作目の生育に必要な窒素を速やかに供給できるかが課題になるとみられる。有機質肥料は土壌微生物による分解を経て無機化するため、C/N比の低い緩効性の資材を選ぶなど、二期作目の追肥タイミングに合わせた肥効コントロールの工夫が必要になると考えられる。この点は原文の実証範囲外であり、取り組む際は地域の普及指導センター等に相談することが望ましい。

よくある失敗と対策

  • 短稈品種を自脱型コンバインで収穫してしまう:こぎ残しロスが増える。二期作目の稈長が55cmを下回る品種は、普通型コンバインでの収穫を検討する。
  • 移植時期と品種の早晩性が合っていない:5月植えで早生〜中生品種を使うと、一期作目の収穫が遅れて二期作目が低温にさらされ、大幅な減収につながる。地域の作期カレンダーに合わせて極早生品種を優先する。
  • 肥料の施用量を一期作と同じにしてしまう:今回の現地実証では、一期作目の収穫前後に分けて追肥を行っている。二期作目の生育段階に合わせた施肥設計が必要である。

まとめ

水稲の再生二期作は、移植時期と品種、そしてコンバインの種類という3つの要素がかみ合って初めて、一期作700kg・二期作300kgという合計約1t/10aの多収と良食味を両立できることが、今回の現地実証で示された。自脱型コンバインのまま収穫できる品種を選ぶか、普通型コンバインへの投資を検討するかは、産地ごとの経営判断になる。あなたの産地では、再生二期作や多収品種の導入をどう考えますか。あなたの現場の声を、記事下のアグリコメで聞かせてください。

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現場で使える!専門用語ミニ辞書

再生二期作(さいせいにきさく)
一期作目を収穫した後、切株から再生した「ひこばえ」を二期作目として栽培・収穫する方式。二期作目の移植作業が不要になる点が通常の二期作との違い。
稈長(かんちょう)
根元から穂の付け根までの長さ。コンバインの種類を選ぶ際の重要な判断材料になる。
自脱型コンバイン
穂のみを脱穀部に投入するコンバイン。稈が短い品種では穂が脱穀部に届かず、こぎ残しロスが増えやすい。
普通型コンバイン
作物体全体を脱穀部に投入するコンバイン。稈が短い品種でも脱穀ロスが増えにくく、大豆など幅広い作物に対応する。
ひこばえ
植物の切株から再生してくる芽。再生二期作の二期作目はこのひこばえを育てる。
籾数(もみすう)
単位面積当たりの籾の数。収量を左右する主要な要因の一つ。
登熟歩合(とうじゅくぶあい)
ふるいに掛けた際に落ちない充実した玄米が入っている籾数の割合。登熟の良し悪しを示す指標。
千粒重(せんりゅうじゅう)
充実した玄米千粒の重量。品種や登熟条件によって変動し、収量構成要素の一つとして扱われる。

参考

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アグリコメ 1

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  • 編集部NextTrend Review 編集部

    【編集部より】皆さんの産地では、再生二期作や同様の多収技術に取り組んでいますか?使用している品種やコンバインの種類、収量の実感を教えてください。

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