TECHNICAL MANUAL — 営農技術解説

タマネギ大玉と多収の両立策

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科目: 選択科目 野菜 / 栽培区分: 共通

タマネギ栽培では「大玉にするか、収量を取るか」が長年の悩みどころでした。農研機構は、球の大きさ(球重)が生育期間中に葉が受けた光の総量=積算受光量でほぼ決まることを明らかにし、品種に応じた栽植密度の調整で大玉(300g以上)と高収量(4t/10a以上)を両立できる条件を示しました。本記事では、この研究結果を営農現場の判断基準として使えるように整理します。

国内のタマネギ流通量は年間約130万tですが、国内出荷量は約102万tにとどまり、不足分は輸入に依存しています。主産地(北海道・佐賀・兵庫・長崎・愛知の上位5道県で国内生産の約8割)が不作になると価格が急騰するため、安定供給の確保は業界共通の課題です。一方で現場では、株間を詰めて収量を優先するか、広げて大玉比率を上げるかの判断が、品種特性や気象条件によって揺れ動いているのが実情です。今回の知見は、この判断に客観的な目安を与えるものといえます。

結論:球重は「受光量」でほぼ決まる

研究では、積算受光量と球重の間に極めて強い正の相関(r=0.99)が確認されました。光を多く受けた株ほど大きな球を形成し、この関係は試験した2品種・栽植密度の範囲すべてで共通して見られました。つまり、球肥大を左右する一次要因は栽植密度そのものではなく、栽植密度の違いによって変化する「葉が受ける光の量」だということです。

原理:なぜ受光量が球重を決めるのか

積算受光量は、作物が生育期間中に受けた光エネルギーの総量で、光合成による乾物生産量の指標になります。タマネギの球は、葉で作られた光合成産物(炭水化物)が転流・蓄積してできるため、葉が受け取る光が多いほど生産される光合成産物も増え、結果として球が大きくなります。

受光量そのものは主に葉面積(葉の広がり)に依存します。株間を広げる疎植条件では、個々の株が利用できる光や養分が増えて葉が大きく育ち、受光量が増加するため球重も増加します。逆に密植条件では、株どうしの葉が重なり合って群落構造が密になり、個々の株が受ける光は減るため球重は小さくなります。ただし密植は単位面積あたりの株数が多いため、収量(単位面積あたりの総重量)はむしろ増加します。これが球重と収量のトレードオフの正体です。

現場での手順・判断基準

現場で栽植密度を設計する際のチェックポイントは次のとおりです。

  • 出荷目的を先に決める:青果用の大玉規格を狙うのか、加工用など収量重視なのかで密度設計が変わる
  • 品種特性を確認する:同じ株間でも品種によって球重・収量のバランスが異なる
  • 群落の光環境を意識する:地表面が露出するほどの疎植か、葉が密に茂る密植かで受光量が大きく変わる
  • 収量の内訳を見る:総収量だけでなく、2L規格(300g以上)の占める割合を確認し、単価への影響を把握する

研究で示された東北地域・春まき栽培における具体的な目安は以下のとおりです。

品種

株間の目安

栽植密度

特徴

トタナ

12~24cm

10,400~20,800株/10a

範囲内で調整すれば球重300g以上かつ4t/10a以上を同時達成可能

もみじ3号

16~24cm程度

疎植寄り

広めの株間で大玉生産に適する。収量とのバランス要考慮

※上記は本研究(岩手県盛岡市、2021〜2022年試験)で得られた条件であり、地域・気象条件によって最適値は変わり得ます。導入にあたっては地域の普及指導センター等に相談することをおすすめします。

スマート農業技術の活用により、圃場ごとの生育データや気象データをもとに栽植密度や収穫適期を判断する動きも広がっています。こうした技術の比較検討には、関連情報もあわせて確認しておくと判断の幅が広がります。

一次情報(原文)を確認する

慣行栽培と有機栽培での違い

今回の研究は栽植密度と受光量という物理的な要因に着目したものであり、施肥体系が化学肥料か有機質肥料かによって原理自体が変わるものではありません。慣行栽培・有機栽培のいずれでも、「株間を広げれば受光量が増え球重が上がり、密植すれば収量が上がる」という基本関係は共通して当てはまると考えられます。

ただし有機栽培では、初期生育の揃いや肥効の立ち上がりが緩やかになりやすく、葉面積の拡大ペースが慣行栽培と異なる場合があります。そのため、同じ株間設定でも受光量の確保状況が変わり得る点には注意が必要です。有機栽培で大玉生産を狙う場合は、通常以上に初期の葉面積確保(元肥設計や活着の安定)を意識し、株間はやや広めから試す方が無難と考えられます。

よくある失敗と対策

  • 失敗例1:収量を優先して密植にしたら小玉ばかりになった→ 出荷規格(2L以上など)の目標を先に決め、密植と疎植の中間域で品種ごとの実績を確認してから本圃に展開する
  • 失敗例2:大玉を狙って疎植にしたが総収量が落ち込んだ→ 疎植は株数減少分を球重増加で補えるかがポイント。品種によって疎植への反応(球重の伸び方)が異なるため、品種特性を事前に把握する
  • 失敗例3:栽植密度だけを基準にして、群落の実際の茂り具合を見ていない→ 生育期間中に葉がどれだけ茂り光を遮っているか(群落構造)を定点観察し、受光量の目安として活用する

まとめ

タマネギの球重は、栽植密度そのものよりも「生育期間中に葉がどれだけ光を受けたか」という積算受光量でほぼ決まることが、農研機構の研究で示されました。品種ごとに球重と収量のバランスが取れる株間の範囲が異なるため、出荷目的に応じて密度を設計することが、大玉と高収量を両立させる実践的な方法になります。あなたの圃場では、株間や品種によって球重や収量がどう変化していますか。あなたの現場の声を、記事下のアグリコメで聞かせてください。

現場で使える!専門用語ミニ辞書

積算受光量(せきさんじゅこうりょう)
作物が生育期間中に受けた光エネルギーの総量のこと。光合成による乾物生産量の指標となり、本研究ではタマネギの球重とほぼ1対1の関係にあることが示された。
栽植密度(さいしょくみつど)
単位面積あたりに植え付ける株数のこと。株間・条間を調整することで変化させ、球重と収量のバランスを左右する最も基本的な管理項目。
トレードオフ
一方を増やすと他方が減る関係のこと。タマネギでは株数(収量)を増やすと1株あたりの球重が下がる関係がこれにあたる。
収量形成(しゅうりょうけいせい)
作物の収穫量がどのような要因・仕組みで決まるかを表す概念。栽植密度や受光量が収量形成にどう影響するかを解析することで、栽培設計の根拠になる。
葉面積(ようめんせき)
植物の葉が広がっている面積のこと。光を受け取る面積に直結し、葉面積が大きいほど受光量が増え球肥大が促進される。
群落構造(ぐんらくこうぞう)
複数の株が集まって生育する際の葉の配置や茂り具合のこと。密植では群落が密になり地表が隠れ、疎植では地表が露出するなど、受光環境を左右する。

参考

一次情報(原文)を確認する

アグリコメ 1

現場のプロの視点で、この記事への意見や経験を共有しましょう。

この記事、あなたの現場ではどう受け止めましたか? その一言が、ほかの農家の判断材料になります。

  • 編集部NextTrend Review 編集部

    【編集部より】皆さんの圃場では、タマネギの株間設定を球重重視・収量重視のどちらで決めていますか。品種や地域による違いも含めて教えてください。

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