TECHNICAL MANUAL — 営農技術解説

玉ねぎ 球肥大の管理

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PRE-CHECK

事前チェック

読む前に、今の判断を確かめます。すでに判断できる場合は、判断演習へ進めます。

  1. Q1/2

    この章を読む前の確認です。玉ねぎの肥大が始まるきっかけについての確認です。

    玉ねぎの鱗茎肥大が始まる主なきっかけとして、正しいものはどれですか。

  2. Q2/2

    この章を読む前の確認です。玉ねぎの球(鱗茎)ができる仕組みについての確認です。

    玉ねぎの球(鱗茎)の成り立ちと、肥大開始前の管理の関係について、正しい理解はどれですか。

この章で学ぶこと(学習目標)

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 玉ねぎの球肥大が日長と気温によって始まる仕組みを理解し、追肥・灌水の切り替え時期を自分で判断できる
  • 倒伏(ねかし)や葉数などの観察指標から、収穫時期と予措(キュアリング)の要否を判断できる
  • 土壌群や気象条件の違いが肥大期の水分管理・病害リスクにどう影響するかを説明できる

所要時間の目安: 読了30分、圃場での観察記録を含めると初年度は作期を通じて月1〜2回の確認が必要です。

結論

玉ねぎの生育管理は、次の順序で判断します。

  1. 定植〜肥大開始前: 葉数を確保することを最優先にする。追肥と雑草防除で栄養成長を十分に進める。
  2. 肥大開始のサインを確認する: 日長・気温条件が満たされ、葉の中心から球の肥大が外から見てわかるようになったら、生殖成長への切り替わりと判断する。
  3. 肥大開始後は追肥を打ち切る: 窒素が残っていると首部が太いまま枯れ上がらない「べと首」や分球、貯蔵性低下につながるため、以後は水分管理と病害観察に軸足を移す。
  4. 倒伏率を収穫の目安にする: 圃場全体の倒伏が一定割合(目安8割程度)に達したら、天候を見て収穫する。
  5. 収穫後は予措を行ってから貯蔵・出荷する: 茎葉と首部を十分乾燥させずに密閉・箱詰めすると腐敗や発芽のリスクが高まる。

原理: なぜ肥大のタイミング管理が重要か

球は葉の集合体である

玉ねぎの可食部(鱗茎)は、茎そのものではなく、葉の基部(葉鞘)が肥大して重なり合ったものです。中心にある盤茎(ばんけい、短縮した茎)から葉が次々と発生し、その葉の基部に糖やその他の同化産物が蓄積して鱗片となります。したがって、肥大開始までにどれだけ多くの葉を展開させられたかが、最終的な球の大きさの上限を決めます。肥大が始まってから葉数を増やそうとしても遅く、定植後の栄養成長期にいかに葉数を確保するかが最初の勝負になります。

肥大開始は日長と気温の組み合わせで起こる

玉ねぎは日長反応性の強い作物で、一定の日長(限界日長)を超えると栄養成長から鱗茎肥大(生殖的な転換)へと生理が切り替わります。品種によって限界日長が異なり、短日型・中日型・長日型に分類されます。地域や作型に合わない品種を選ぶと、肥大開始が早すぎて小玉になったり、遅すぎて収穫期がずれ込んだりします。品種選定と播種・定植時期は、都道府県の作型基準で確認してください。日長条件が整っても低温すぎると肥大が進みにくく、気温もあわせて律速要因になります。

肥大開始後の窒素が品質を下げる理由

肥大が始まると、植物のエネルギーは新しい葉や根をつくることよりも、既存の葉の基部に糖・水分を転流させることに使われるべき局面に入ります。ここで窒素が多く残っていると、新しい葉の発生や既存葉の緑葉保持が続き、球への転流が妨げられます。その結果、首部(葉鞘の付け根)が太いまま枯れ上がらない「べと首」や、鱗茎の中に複数の芯ができる分球が起こりやすくなります。これらは外観・貯蔵性ともに規格を下げる要因であり、食味・形状という商品価値に直結します。

倒伏(ねかし)は転流終了のサイン

球への糖・水分の蓄積が完了すると、葉から水分・養分が抜けて首部が柔らかくなり、株は自然に倒伏します。これは植物が休眠に入る生理的なサインであり、人為的に葉を折る「茎折り」とは区別して理解する必要があります。倒伏の進み具合を圃場全体で観察することが、収穫時期の客観的な判断材料になります。

根・茎・葉の役割分担

根は水分・養分の吸収を担い、葉は光合成による同化産物の生産を担います。茎は盤茎として著しく短縮しており、葉の発生点と根の発生点をつなぐ役割を果たします。栄養欠乏の症状は、新葉に出るか古葉に出るかで、移動しやすい養分(窒素など)か移動しにくい養分かの見分けに使えます。この見方は前提ユニットの生育診断と共通です。

判断の実例

実例1: 肥大開始後に追肥が遅れていた場合

状況: 長日型品種を栽培中、日長が肥大の目安となる時間帯に達し、葉数も目標本数まで確保できていたが、追肥の予定が立て込みで遅れていた。

判断: 追肥を中止し、以後は水分・病害管理に切り替える。

理由: 葉数が十分に確保できた段階で肥大期に入っているため、ここで窒素を追加しても球の大きさを増やす効果は乏しく、むしろ首部の枯れ上がりを遅らせてべと首や貯蔵性低下を招くリスクのほうが大きいため。

実例2: 砂質土で肥大期に乾湿が急変した場合

状況: 砂質土の圃場で肥大期に乾燥が続いたため灌水量を増やしたところ、直後にまとまった降雨があり、土壌水分が急激に増加した。

判断: 排水路を確保し、それ以上の灌水は行わない。

理由: 急激な水分変動は鱗茎の裂皮や二次肥大(肌荒れ)を招きやすく、傷口から軟腐病菌が侵入する経路になるため。砂質土は保水力が低く水分変動が大きいため、灌水量をこまめに調整する必要がある。

実例3: 倒伏率を基準に収穫時期を判断した場合

状況: 圃場全体の倒伏が目視でおよそ8割に達した。

判断: 晴天が続くタイミングを選んで収穫し、直後に圃場または風通しの良い場所で予措を行う。

理由: 倒伏は葉から球への同化産物転流が終了し休眠に入ったサインであり、このタイミングを過ぎて放置すると降雨による腐敗や再萌芽のリスクが高まるため。未倒伏の株が残っている段階で一斉収穫すると、未熟球が混じり貯蔵性が不均一になる。

手順と判断基準

ステップ1: 定植前の土づくり確認

  • [ ] 作土が膨軟で排水性があるか(低地土・砂質土・黒ボク土いずれも排水対策を事前に確認)
  • [ ] 堆肥は十分に腐熟しているか(未発酵の家畜ふん堆肥は使用しない。化学合成資材が混入していないかもあわせて確認)
  • [ ] 元肥のリン酸は十分か(特に黒ボク土はリン酸が土壌に固定されやすいため、施肥設計時に意識する)
  • [ ] 施肥量は都道府県の施肥基準で確認したか

ステップ2: 活着〜栄養成長期(肥大開始前)

  • [ ] 定植後の活着を確認し、追肥で葉数の確保を進めているか
  • [ ] 雑草との競合で葉数確保が妨げられていないか(除草のタイミングを逃さない)
  • [ ] 目標とする葉数に達しているか圃場観察で確認する

ステップ3: 肥大開始期の見極め

  • [ ] 栽培品種の限界日長・作型を確認し、地域の目安日長・気温に達しているか
  • [ ] 株元の肥大が外観から確認できるか
  • [ ] 上記いずれかが確認できた時点で、以後の追肥を中止する

ステップ4: 肥大〜成熟期の管理

  • [ ] 土壌水分が乾湿を繰り返していないか(急激な変動を避ける)
  • [ ] べと病・軟腐病などの病害兆候を定期的に観察する
  • [ ] 有機JAS で使用可能な資材かどうかは、別表と認証機関・ラベルで確認した上で用いる

ステップ5: 収穫判断

  • [ ] 圃場全体の倒伏率を目視で確認する(目安8割程度)
  • [ ] 降雨予報を確認し、晴天が続く時期に収穫日を設定する

ステップ6: 予措・貯蔵

  • [ ] 収穫後、風通しの良い場所で茎葉と首部を十分乾燥させる
  • [ ] 乾燥が不十分なまま密閉・箱詰めしていないか確認する

よくある失敗と対策

失敗

なぜまずいか

対策

肥大開始後も追肥を続ける

球への転流が妨げられ、べと首・分球・貯蔵性低下を招く

葉数確保後は日長・気温の目安を確認し、肥大開始とともに追肥を打ち切る

栄養成長期の葉数確保が不十分なまま肥大期に入る

肥大の土台となる葉が少なく小玉化する

定植後の活着・追肥・除草を計画的に行い、肥大開始前に目標葉数を確認する

倒伏前に慌てて収穫する

未熟な球は首が太く乾きにくく、貯蔵中に腐敗しやすい

倒伏率を客観的な基準として用い、慌てず収穫時期を判断する

収穫後すぐに箱詰め・密閉する

予措不足で腐敗・発芽が起きやすい

風通しの良い場所で茎葉・首部を十分乾燥させてから選別・貯蔵する

排水不良の圃場にそのまま定植する

肥大期の多湿で軟腐病が多発しやすい

畝立てや暗渠など、土壌群に応じた排水対策を事前に行う

まとめ(判断基準の再掲)

  1. 肥大開始前は葉数確保を最優先にする。
  2. 日長・気温の条件が整い、肥大の兆候が見えたら追肥を打ち切る。
  3. 肥大期は乾湿の急変を避け、土壌群に応じて水分管理を調整する。
  4. 倒伏率(目安8割程度)を収穫時期の客観的な判断材料にする。
  5. 収穫後は予措で十分乾燥させてから貯蔵・出荷する。

現場実践課題

自分の圃場で、定植から収穫までの間、以下の項目を定期的に記録してください。特に肥大開始のタイミングと倒伏の進み具合を重点的に観察します。

観察日

葉数(本)

球の肥大の有無

倒伏率(目安)

土壌水分の状態

天候

判断・対応

例: 4/10

8

なし

0%

適湿

晴

追肥継続

例: 5/15

12

あり(肥大開始)

0%

やや乾燥

晴

追肥中止、灌水へ切替

例: 6/5

—

あり

約80%

適湿

晴予報続く

収穫・予措の準備

現場で使える!専門用語ミニ辞書

球肥大(きゅうひだい)
玉ねぎの葉鞘基部が肥大し鱗茎(可食部)を形成する生育段階
日長反応(にちちょうはんのう)
日の長さの変化によって花芽形成や肥大開始などの生理が切り替わる性質
盤茎(ばんけい)
玉ねぎの短縮した茎。根と葉の発生点をつなぐ部分
鱗片(りんぺん)/鱗茎(りんけい)
肥大した葉の基部(鱗片)が重なってできた球全体(鱗茎)
べと首
肥大期以降も窒素が残り、首部が太いまま枯れ上がらない状態
分球(ぶんきゅう)
鱗茎の中に複数の芯ができ、球が割れたように分かれる現象
倒伏(とうふく)/ねかし
葉から球への転流が終わり、株が自然に倒れる現象。収穫時期の目安
予措(よそ)/キュアリング
収穫後に茎葉・首部を十分乾燥させる工程。貯蔵性を高める
軟腐病(なんぷびょう)
細菌による病害で、多湿・傷口から感染し球が腐敗する

参考(一次情報)

  • 農研機構 たまねぎ栽培に関する技術資料
  • 都道府県農業改良普及センターの作型・施肥基準資料
  • 有機農産物の日本農林規格(有機JAS)
  • みどりの食料システム戦略(農林水産省)

EXERCISE

判断演習

本文の判断基準を使って答えてください。回答すると、選択肢ごとの理由が表示されます。

  1. Q1/2

    長日型品種を栽培中です。日長が肥大の目安に達し、葉数も目標本数まで確保できましたが、予定していた追肥が作業の立て込みで遅れ、まだ実施できていません。

    この状況での判断として、最も適切なものはどれですか。

  2. Q2/2

    玉ねぎ圃場で、株の倒伏が進み、圃場全体の倒伏率が目視でおよそ8割に達しました。今後数日は晴天が続く予報です。

    この状況での対応として、最も適切なものはどれですか。

学習状況を確認しています…

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