TECHNICAL MANUAL — 営農技術解説

年間作業カレンダーの組み立て

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PRE-CHECK

事前チェック

読む前に、今の判断を確かめます。すでに判断できる場合は、判断演習へ進めます。

  1. Q1/2

    収穫適期に関する正しい理解はどれか。

  2. Q2/2

    前提ユニット「販路から逆算する作付け計画」の考え方として正しいのはどれか。

この章で学ぶこと(学習目標)

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 複数品目の作業時期(育苗・定植・中耕・防除・収穫・緑肥すき込み等)を一枚のカレンダーに重ね、作業の競合を事前に発見できる
  • 労働力・機械・圃場(ほ場)という3つの制約から、繁忙期の作業配分を調整できる
  • 緑肥や休閑期間を作付け計画に組み込み、年間を通じた土づくりの時間軸を設計できる

所要時間の目安: 本文の読了に30分、自圃場でのカレンダー作成演習に半日〜1日。

結論

年間作業カレンダーは、以下の順序で組み立てます。

  1. 前章(販路から逆算する作付け計画)で決めた品目と作付け面積を、品目ごとに1行とした一覧表に書き出す
  2. 各品目について、育苗・定植(播種)・中耕/除草・防除・収穫・片付けの作業時期を旬(上旬・中旬・下旬)単位で記入する
  3. 緑肥を利用する圃場は、すき込みから定植まで3〜4週間の間隔を確保できるよう、緑肥の播種時期と定植予定日を逆算して配置する
  4. 全品目を重ねて、同一週に作業が集中する「山」を探す
  5. 山が見つかったら、優先順位(収穫適期が動かせない作業を最優先)に従い、定植時期の分散・品種の早晩差の活用・外部委託のいずれかで調整する
  6. 調整後のカレンダーを、労働力(人数×稼働日数)・機械の台数・育苗スペースの3つの制約と照合し、超過がないか確認する
  7. 超過がある場合は3〜6を繰り返し、作付け品目数・面積・時期のいずれかを見直す

原理: なぜ作業は重なるのか

生育期間と作業の固定点

作物にはそれぞれ、播種(育苗)から収穫までの標準的な生育日数があり、この日数は気温や日長に強く依存するため、任意に動かせる余地は限られています。特に収穫適期は、食味・形状(糖度・硬さ・サイズ)が最良となる窓が数日〜1週間程度と狭い品目が多く、ここを逃すと規格外品が増え、商品価値(単価)が下がります。つまり収穫作業は「動かせない固定点」として扱い、その前後の作業(防除・中耕)を固定点から逆算して配置する必要があります。

複数品目を同じ圃場・労働力で回す制約

一つの法人が複数品目を扱う場合、圃場面積・労働力・機械(育苗用ハウス、耕耘機、防除機材など)は共有資源です。異なる品目の定植適期が同じ旬に重なると、限られた人数と機械で同時にこなせず、どちらかの作業が遅延します。定植の遅れは根の活着不良を招き、その後の生育全体(吸収・同化の器官である根と葉の発達)に影響するため、遅延の影響は収穫期まで持ち越されます。

緑肥と休閑期間の時間軸

緑肥は、有機物の供給、マメ科による窒素固定、イネ科による余剰養分の吸収・保持、根による物理性の改善、裸地被覆による土壌保全という複数の働きを持ちますが、これらの効果を次作に活かすには、すき込み後に分解者(細菌・糸状菌)による有機物の分解が一定程度進む時間が必要です。すき込みから定植までの間隔は3〜4週間を標準の目安とします(農研機構の緑肥利用マニュアルに基づく)。この期間を作業カレンダーにあらかじめ組み込まないと、緑肥を使いたい圃場で定植が間に合わなくなります。

土壌群・気候帯による作業時期のずれ

同じ品目でも、黒ボク土のように保水性・保肥力が高い土壌と、砂質土のように水はけが良く乾きやすい土壌とでは、適期の幅や作業後の圃場の乾湿回復の速さが異なります。降雨後に圃場に入れるまでの日数も土壌群や気候帯によって変わるため、年間カレンダーは全国一律のひな形をそのまま使うのではなく、自地域の土壌群と気候帯に照らして調整します。地域差の大きい施肥や播種適期の閾値は、都道府県の基準で確認します。

判断の実例

実例1: 定植適期が重なる2品目をどう離すか

状況: 露地栽培で、品目Aの定植適期が5月中旬、品目Bの定植適期も5月中旬に重なっており、両方とも面積が50aずつ、定植作業に要する人員は1品目あたり延べ6人日。法人の繁忙期の動員可能人員は1日あたり4人。

判断: 品目Bの定植を、品種の中から中晩生の系統に切り替え、定植適期を5月下旬にずらす。

理由: 5月中旬に2品目を同時に定植しようとすると、延べ12人日の作業を1日あたり4人で消化するには3日以上かかり、適期の幅(通常1〜2週間)を超えるおそれがある。品種の早晩差を使えば、圃場面積や品目構成を変えずに作業を分散でき、どちらの品目も適期内に定植を終えられる。

実例2: 緑肥すき込みの時期が収穫後に確保できない場合

状況: 秋冬野菜の収穫終了が11月下旬で、次作(春どり品目)の定植は3月上旬を予定している。緑肥(イネ科)をすき込み後、3〜4週間の分解期間を確保すると、すき込み適期は2月上旬までとなる。

判断: 緑肥の播種を収穫直後の11月下旬〜12月上旬に前倒しし、生育期間が短くても地上部をある程度確保できる品目(生育の早いイネ科緑肥)を選ぶ。

理由: 気温が下がる時期に播種すると緑肥自体の生育量が落ちるため、すき込み適期までに最低限の被覆と根量を確保できる品目を選定しないと、緑肥の効果(養分吸収・物理性改善)が不十分なまま定植期を迎えてしまう。

実例3: 収穫作業と防除作業が同じ週に重なる場合

状況: 病害の多発が予想される時期に、別品目の収穫最盛期が重なった。収穫は延べ8人日/週、防除は延べ2人日/週を要する。

判断: 防除は収穫班と別の人員(パート・委託)で確保し、収穫作業の人員配分は変更しない。

理由: 収穫適期は数日〜1週間と幅が狭く、ここを収穫以外の作業に人員を回して遅らせると規格外品の増加につながる。一方、防除は病害の発生状況に応じて実施時期の融通が多少利くが、タイミングを逃すと被害が拡大するため、人員を別途確保してでも両方を期日内に実施する。

手順と判断基準

  • [ ] ステップ1: 前章で決定した品目・面積の一覧を用意したか
  • [ ] ステップ2: 各品目の育苗・定植・中耕・防除・収穫の時期を旬単位で記入したか
  • [ ] ステップ3: 緑肥を使う圃場で、すき込みから定植まで3〜4週間を確保できているか(確保できない場合は緑肥品目または播種時期を見直す)
  • [ ] ステップ4: 同一旬に重なる作業の延べ人日を合計し、動員可能人員(1日あたりの人数×稼働日数)を超えていないか確認したか
  • [ ] ステップ5: 超過している場合、次の3つの調整手段のいずれかを検討したか
  • 品種の早晩差を使って定植・収穫時期を分散する
  • 外部委託・パート雇用で繁忙期の人員を補う
  • 作付け面積・品目数を見直す(前章の作付け計画に差し戻す)
  • [ ] ステップ6: 機械(耕耘機・防除機材・育苗ハウス等)の台数・容量が同時期に重複使用されていないか確認したか
  • [ ] ステップ7: 収穫適期(食味・形状が最良となる窓)を優先し、他の作業で圧迫していないか最終確認したか

よくある失敗と対策

失敗

なぜまずいか

対策

品目ごとに別々のカレンダーを作り、重ねて見ていない

同一週への作業の集中に気づかず、繁忙期に人員が不足する

全品目を1枚の表に重ね、旬単位で延べ人日を合計する

緑肥のすき込みから定植までの期間を考慮せず播種計画を立てる

分解が進まないうちに定植し、未分解有機物による生育障害や窒素飢餓のおそれがある

すき込みから定植まで3〜4週間を逆算してカレンダーに組み込む

収穫適期を他の作業の都合で動かす

食味・形状の劣化や規格外品の増加により商品価値が下がる

収穫適期を固定点として扱い、他の作業をその前後に配置する

全国一律のひな形カレンダーをそのまま使う

土壌群・気候帯による適期の幅や圃場の乾湿回復の違いを無視し、作業が適期を外れる

自地域の土壌群・気候帯、都道府県の基準に照らして時期を調整する

労働力の制約を確認せずカレンダーを確定する

繁忙期に実際には消化できない作業量を計画してしまう

動員可能人員・機械台数・育苗スペースと照合してから確定する

まとめ(判断基準の再掲)

  1. 品目ごとの作業時期を旬単位で一覧化し、全品目を重ねて作業の山を見つける
  2. 緑肥を使う圃場は、すき込みから定植まで3〜4週間を確保できるよう逆算して配置する
  3. 収穫適期は動かせない固定点として扱い、他の作業をその前後に配置する
  4. 作業の山は、品種の早晩差・外部委託・作付け計画の見直しのいずれかで調整する
  5. 確定前に、労働力・機械・育苗スペースの3つの制約と照合する
  6. 地域差の大きい適期の幅は、自地域の土壌群・気候帯と都道府県の基準に照らして調整する

現場実践課題

自分の法人(圃場)が今年作付けを予定している品目をすべて書き出し、育苗・定植・中耕・防除・収穫・緑肥すき込みの時期を旬単位で記入した年間作業カレンダーを1枚作成してください。作成後、同一旬に延べ人日が動員可能人員を超えている週がないか確認し、超過がある場合はどの調整手段を使うかを記録してください。

記録例:

品目

作業

時期(旬)

延べ人日

動員可能人日

超過の有無

調整手段

品目A

定植

5月中旬

6

8

なし

-

品目B

定植

5月中旬

6

8

あり(2)

品種の早晩差で下旬にずらす

緑肥(イネ科)

すき込み

2月上旬

2

8

なし

-

現場で使える!専門用語ミニ辞書

適期(てきき)
ある作業(播種・定植・防除・収穫など)を行うのに最も適した期間。品目や作業内容によって幅は数日〜数週間と異なる
延べ人日(のべにんにち)
作業に必要な人数と日数を掛け合わせた労働量の単位。例: 2人で3日かかる作業は延べ6人日
早晩性(そうばんせい)
品種によって生育期間の長短が異なる性質。早生・中生・晩生などに分類され、作業時期の分散に利用できる
休閑期間(きゅうかんきかん)
作物を栽培せず圃場を休ませる期間。緑肥の栽培やすき込み後の分解期間に充てられることが多い
規格外品(きかくがいひん)
出荷規格(サイズ・形状・傷の有無など)を満たさず、通常の価格では販売できない収穫物

参考(一次情報)

  • 農研機構「緑肥利用マニュアル」
  • 農林水産省「有機農業の推進に関する法律」及び有機JAS 関連告示・別表
  • 農林水産省「みどりの食料システム戦略」
  • 気象庁「大気中の二酸化炭素濃度の観測結果」(本章では直接の数値利用なし、関連章の参照用)

EXERCISE

判断演習

本文の判断基準を使って答えてください。回答すると、選択肢ごとの理由が表示されます。

  1. Q1/2

    秋冬野菜の収穫終了が12月上旬で、次作(春どり品目)の定植は2月中旬を予定している。緑肥(マメ科)をすき込み後、3〜4週間の分解期間を確保すると、すき込み適期は1月中旬までとなる。

    この状況での最も適切な判断はどれか。

  2. Q2/2

    露地栽培で、品目Cと品目Dの定植適期がいずれも6月上旬に重なっている。両品目とも面積40aで、定植作業には1品目あたり延べ6人日を要する。法人の繁忙期の動員可能人員は1日あたり3人である。

    この状況での最も適切な判断はどれか。

学習状況を確認しています…

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