仏新興、細胞選抜で育種高速化

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Amateraとは何か

フランス発のアグリテック企業Amateraは、2022年にOmar Dekkiche氏(CEO)とLucie Kriegshauser氏(CTO、博士号取得)が共同設立した。当初はカフェインを含まないコーヒー、アラビカ種のような風味を持つロブスタ種「Robustica」、うどんこ病・べと病に強いブドウなど、多年生作物の新品種開発に取り組んできた。

育種では、交配や遺伝子編集によって生まれた候補の中から優れた個体を選び出す「スクリーニング」が欠かせない。しかし数百から数万という規模の候補を一つずつ植物体にまで育てて評価するには、膨大な時間と人手がかかるのが実情だ。Amateraは、この工程を植物細胞の段階に前倒しすることでボトルネックの解消を目指している。

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技術の核心:細胞レベルでの高速スクリーニング

Amateraは物理的・化学的な手法で植物に自然な遺伝的変異を誘発し、非GMO(遺伝子組み換えでない)の細胞株からなる大規模なライブラリーを作成する。これらをシーケンス(塩基配列解析)し、望ましい特性を持つ細胞株を選び出す。同じハイスループットスクリーニング(大量の試料を自動で高速処理する選抜手法)は、ゲノム編集など他の手法で作られた細胞株にも応用できるという。

Dekkiche氏は「従来は細胞をまず植物体に育て、その後に遺伝子型を調べて何を持っているかを確認するのが標準的な手法だった」と説明する。Amateraはこの順序を逆転させ、細胞を一つずつ分離して培養し、有望な細胞株だけを選んでから植物体に再生させる。

従来法とAmateraのアプローチの違い

項目

従来の育種スクリーニング

Amateraのアプローチ

評価の対象

植物体まで育ててから評価

細胞の段階で評価

必要な作業

大量の植物を組織培養・栽培

単一細胞の微小培養

必要な技術

栽培・圃場管理の人手

細胞生物学+自動化・ロボティクス

植物体への再生

すべての候補を再生

有望な候補のみ再生

この細胞単位での操作には、単一細胞を培養・増殖させる細胞生物学の専門知識に加え、人手では扱えない微小な作業を担う自動化とロボティクスの組み合わせが必要になる。Amateraは、単一の植物細胞を一つずつ培養する独自パイプラインを特許化しているとしている。

期待される効果:コストと時間

Dekkiche氏によると、同社は現在、実験室での実データをもとにどれだけのコストと時間を削減できるかを検証している段階だが、従来法と比べて少なくともコストは5分の1、時間は半分に抑えられると見込んでいる。ただしこれはあくまで現時点での見込みであり、正式なデータはまだ公表されていない点には留意が必要だ。

適用できる形質には限界がある

細胞段階でのスクリーニングがどんな形質にも使えるわけではない。Dekkiche氏は「遺伝子マーカー(特定の形質と結びついた目印となる遺伝情報)が分かっている形質でなければ、細胞レベルでの選抜は難しい」と説明する。

  • カフェイン生成のように、細胞自体に代謝機能として表れる形質は細胞段階での識別がしやすい
  • 耐乾性や収量性のように、土壌・微生物・気候など圃場環境との相互作用が関わる形質は、現時点で細胞レベルの明確なスクリーニング手法が確立されておらず、同社も「保証はしない」としている

将来的には遺伝子マーカーが明確でない形質についても、別の評価手法を組み合わせて細胞段階での識別を目指すとしている。

対象作物と進捗

現在の主な取り組みはコーヒーとブドウだ。コーヒーではカフェインフリー品種と、ロブスタ種の頑健性を持ちながらアラビカ種のような風味を目指す「Robustica」を開発中で、品質に関わる新たな遺伝子を特定し検証段階にあるという。ブドウでは、欧州のワイン用ブドウ栽培で大きな課題となっているべと病・うどんこ病への耐性品種を開発している。

また、年間を通じて栽培される主要穀物(annual staple crops)への展開や、種苗会社との提携も「今後数カ月のうちに」進める方針としているが、具体的な提携はまだ発表されていない。

量産化に向けた投資と提携

Amateraは今年、プラットフォームの「産業化」を目的としたシードラウンド(創業初期の資金調達)を実施したほか、欧州連合(EU)が支援するEICアクセラレーター(欧州委員会の革新的企業支援プログラム)への採択を6月に確保した。Dekkiche氏は、細胞生物学・ロボティクス・機械学習・人工知能を統合し、植物細胞の再生ワークフローを自律的に実行する一体型の装置を目指していると述べている。

まとめ

Amateraの技術は、育種における「評価のボトルネック」を植物体ではなく細胞の段階で解消しようとする試みだ。コーヒーやブドウといった多年生作物でまず実証を進めており、コスト・時間の削減効果は見込み値の段階にとどまるものの、遺伝子マーカーが明確な形質に限れば実用化の道筋は見えつつある。

日本のアグリテック系スタートアップや農業ベンチャーにとっても、単一細胞レベルでの自動化・高速評価という発想自体は参考になりうる。ただし導入を検討する場合、(1)細胞生物学の専門人材確保、(2)自動化・ロボティクス機器への初期投資、(3)対象形質に遺伝子マーカーが存在するかどうかの見極め、という3つの前提条件をクリアする必要がある。特に経営体力の小さい企業にとっては、こうした研究開発型の設備投資はハードルが高く、まずは海外の先行事例として技術動向を注視する段階と捉えるのが妥当だろう。

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こうした細胞段階での選抜技術が、将来的に日本の育種現場でどこまで実用的なコスト感で導入できるのか。あなたの現場の声を、記事下のアグリコメで聞かせてください。

現場で使える!専門用語ミニ辞書

非GMO細胞株(ひじーえむおーさいぼうかぶ)
遺伝子組み換えを行わず、物理的・化学的な刺激で自然に生じた変異を持つ細胞の系統のこと。育種の候補素材として扱われる。
ハイスループットスクリーニング
多数の試料(細胞や個体)を自動化技術で短時間に大量評価する選抜手法。育種では候補数を効率的に絞り込む際に使われる。
遺伝子マーカー
特定の形質と結びついていることが分かっている遺伝情報の目印。マーカーが明確な形質ほど、早い段階でのスクリーニングがしやすい。
ゲノム編集
生物の遺伝情報を狙った箇所で書き換える技術の総称。細胞株作成の一手法として、自然変異による方法と並んで利用される。
シードラウンド
創業初期のスタートアップが行う資金調達の段階。設備投資や技術の実証・産業化に充てられることが多い。
EICアクセラレーター
欧州連合(EU)が革新的な中小企業・スタートアップの事業化を支援するプログラム。資金や専門支援を受けられる。

参考

Amatera tackles plant breeding bottleneck with high-throughput cell screening platform(AgFunderNews)

アグリコメ 1

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  • 編集部ノウカラ編集部

    【編集部より】育種や品種改良の現場で、候補のスクリーニングにかかる時間や人手はどのくらいかかっていますか?作物や地域の実情も交えて教えてください。

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