TECHNICAL MANUAL — 営農技術解説

作業機の仕組み

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PRE-CHECK

事前チェック

読む前に、今の判断を確かめます。すでに判断できる場合は、判断演習へ進めます。

  1. Q1/2

    トラクターの作業機(耕うん機など)のPTO回転数や作業速度を設定する際の基本的な考え方として、最も適切なものはどれか。

  2. Q2/2

    作業機を選定・設定する際、最初に確認すべきこととして章の結論で示されているのはどれか。

この章で学ぶこと(学習目標)

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 耕うん・播種・施肥・防除・収穫の各作業機について、何を・どういう原理で処理しているかを説明できる
  • 作業機ごとに、ほ場条件(土壌水分・残渣量・畝立ての有無など)に応じた設定・選定の判断ができる
  • 作業機の不具合や仕上がり不良の典型例を見て、原因となっている機構を推測できる

所要時間の目安: 90〜120分(前提ユニット「トラクターの仕組み」を終えていること)

結論

作業機を選ぶ・設定する際は、次の順番で判断します。

  1. 作業の目的を確認する: 土を砕く・混ぜる、種を置く、肥料を施す、病害虫を防ぐ、収穫物を分離する、のうちどれを満たす作業かを明確にする
  2. 対象(土・種・資材・作物体)への作用原理を確認する: 機械的に砕く/切る/混ぜる、精密に位置決めする、散布・散粒する、分離・選別する、のいずれの仕組みかを把握する
  3. ほ場条件と作業機の適合を確認する: 土壌水分・土性・残渣量・畝の有無・作物の草姿などが、その作業機の設計条件に合っているかを確認する
  4. PTO回転数・作業速度・作業深度を設定する: トラクターの出力特性(前提ユニット参照)と作業機の仕様に基づき、メーカー指定値を起点に調整する
  5. 仕上がりを確認し、必要なら再調整する: 砕土率・播種深度・散布むら・収穫ロスなどを目視・簡易計測で確認する

有機JASでは使用できる資材が限定されるため、施肥機・防除機で使う資材は、別表と認証機関・ラベルで使用可否を確認したうえで作業機の設定を決めます。

原理: 作業機はなぜそう動くのか

耕うん機: 回転する刃で土を砕き混ぜる

ロータリー耕うん機は、PTOからの動力で水平軸に取り付けた爪を回転させ、土を切削・反転・砕土します。爪の回転方向(正転・逆転)と回転数によって、砕土の細かさと耕うん深度が変わります。土壌水分が高すぎると土がこねられて団粒構造が壊れ、乾きすぎると大きな塊のまま残るため、適度な水分状態での作業が望まれます。心土(作土より下層)まで耕うん爪が及ぶと、生物や有機物が少ない層の土が作土に混入し、かえって土づくりの効果を薄めることがあります。心土破砕が必要な場合はサブソイラ(心土耕機)など別の機構を使います。

播種機: 種を一定の深さ・間隔に置く

播種機には、種子を一粒ずつ繰り出す点播機(ベルト式・ディスク式など)と、条状にまく条播機があります。いずれも、種子サイズに合った繰出し孔・ディスクを選ぶことと、覆土の厚さを種子の発芽特性に合わせることが要点です。覆土が浅すぎると乾燥で発芽不良になり、深すぎると出芽に養分を使い切って苗が細くなります。緑肥のすき込み後に播種する場合は、有機物の分解が進んでいないと播種床が不安定になりやすいため、すき込みから定植・播種までは3〜4週間を標準の目安とします(農研機構の緑肥利用マニュアルに基づく)。

施肥機: 肥料を均一に・狙った位置に供給する

施肥機は、ホッパーから肥料を繰り出し、散布板や施肥チューブを通じて土壌表面または土中に供給します。全面散布型(ブロードキャスタ)は速効性があり広い面積を処理できますが、散布むらが生じやすく、風の影響も受けます。条施肥型は作物の根圏に近い位置に施肥でき、肥効を効率的に使えます。有機JASで使用できる肥料は堆肥や認証済みの有機質肥料に限られ、未発酵の家畜ふん堆肥は使用できません。堆肥化の過程で化学合成資材が混入していないこと、発酵が十分に進んでいることを、使用前に確認します。

防除機: 薬剤・資材を対象に届ける

防除機(動力噴霧機・ブームスプレーヤなど)は、ポンプで加圧した液をノズルから霧状に噴出し、作物体や土壌表面に付着させます。ノズルの種類(扇形・円錐形など)によって粒径と拡散範囲が変わり、対象(葉の表・裏、地表面)に応じて選びます。有機JASで使用できる防除資材は別表に定められており、使用の可否と使用方法はラベルおよび認証機関で確認します。防除機自体の原理は資材の種類を問わず共通です。

収穫機: 作物体から収穫物を分離する

収穫機は、刈取り・引抜き・掘り取りなどで作物体を機械的に取り込み、茎葉や土と収穫物を振るい・風選・ローラーなどで分離します。コンバインの場合、脱穀部の回転数や振動篩の目開きが、収穫物の損傷率やロス率に影響します。収穫物の損傷は食味・形状の評価(規格・単価)に直結するため、収穫適期の水分・成熟度に合わせて設定を調整します。

判断の実例

実例1: ロータリー耕うん後に土塊が大きく残る

状況: 粘質の低地土で、前作収穫直後(土壌水分が高い状態)にロータリー耕うんを行ったところ、耕うん後に握りこぶし大の土塊が多数残った。

判断: 作業を一時中断し、数日天候を見て土壌表面がやや乾いてから再耕うんする。

理由: 水分が高い状態で砕土すると、土が練られて団粒構造が壊れ、乾燥後にかえって硬い塊になる。土壌水分が下がってから耕うんすることで、爪による切削・反転が効きやすくなり、砕土率が上がる。

実例2: 緑肥すき込み後、播種予定日が迫っている

状況: イネ科緑肥をすき込んで2週間しか経っていないが、播種予定日が近い。

判断: 播種を1〜2週間遅らせ、すき込みから3〜4週間の分解期間を確保してから播種機を入れる。

理由: 分解が不十分な有機物が多い状態で播種床を作ると、播種機の覆土が不安定になり、また微生物による窒素の取り込み(窒素飢餓)で発芽直後の生育が抑制されることがある。農研機構の緑肥利用マニュアルでは3〜4週間を標準の目安としている。

実例3: 未発酵の家畜ふん堆肥が納品された

状況: 購入した堆肥が、匂いが強く塊状の未発酵に近い状態で納品された。施肥機で圃場に施用する予定だった。

判断: 使用を保留し、切り返し・追加発酵またはラベル表示・納品書での発酵状況の確認を行う。確認できるまで施肥機にかけない。

理由: 有機JASでは、家畜の飼養方法(飼料・薬剤)自体は規格で問われないが、堆肥化の過程で化学合成資材が混入していないこと、発酵が十分に進んでいることが確認点となる。未発酵のものを施用すると、分解に伴うガス発生や窒素飢餓で作物に障害が出ることがあり、また有機JAS上も使用できない。

手順と判断基準

ステップ1: 作業目的と対象の確認

  • [ ] 今回の作業が耕うん・播種・施肥・防除・収穫のどれに当たるか明確にしたか
  • [ ] 対象(土・種子・肥料・薬剤・収穫物)の性質(水分・粒径・発酵状態など)を確認したか

ステップ2: 作業機の選定

  • [ ] 対象のサイズ・形状に合う繰出し孔・ノズル・刃の種類を選んだか
  • [ ] 有機JAS対象の資材(肥料・防除資材)は別表と認証機関・ラベルで使用可否を確認したか
  • [ ] 心土への影響が懸念される場合、耕うん深度を作土層の範囲内に収めたか

ステップ3: 設定値の決定

  • [ ] PTO回転数・作業速度はメーカー指定値を起点にしたか(前提ユニット「トラクターの仕組み」参照)
  • [ ] 耕うん深度・播種深度・施肥量は、作目と地域の基準(都道府県の基準で確認)に沿っているか
  • [ ] 緑肥すき込みから播種・定植まで3〜4週間程度の分解期間を確保したか

ステップ4: 仕上がり確認

  • [ ] 砕土率・播種深度・散布むら・収穫ロスなどを目視・簡易計測で確認したか
  • [ ] 不良が見られた場合、水分条件・設定値・機械の摩耗のどれが原因かを切り分けたか

よくある失敗と対策

失敗

なぜまずいか

対策

土壌水分が高いまま耕うんする

団粒構造が壊れ、乾燥後に硬い塊になる

表面の乾き具合を確認してから作業する

耕うん深度が深すぎて心土を巻き込む

生物・有機物の少ない層が作土に混ざり、土づくりの効果が薄まる

耕うん深度を作土層の範囲内に設定する

緑肥すき込み直後に播種する

分解が不十分で播種床が不安定になり、窒素飢餓が起きやすい

すき込みから3〜4週間の分解期間を置く

未発酵堆肥を施肥機にかける

ガス発生や窒素飢餓で生育障害が起き、有機JAS上も使用できない

発酵状況をラベル・納品書・切り返し状況で確認する

防除資材をラベル確認せず使用する

有機JASで使用できない資材を使うと認証に影響する

別表と認証機関・ラベルで使用可否を確認する

収穫機の設定を適期前後で変えない

収穫物の損傷・ロスが増え、食味・形状の評価(規格・単価)が下がる

成熟度・水分に合わせて脱穀部・篩の設定を調整する

まとめ(判断基準の再掲)

  1. 作業の目的(耕うん・播種・施肥・防除・収穫)を確認する
  2. 対象への作用原理(砕く・混ぜる・位置決め・散布・分離)を把握する
  3. ほ場条件(水分・土性・残渣・畝)と作業機の設計条件の適合を確認する
  4. PTO回転数・作業速度・深度をメーカー指定値から調整する
  5. 仕上がりを確認し、必要に応じて水分条件・設定値・機械状態を見直す
  6. 資材(肥料・防除資材)は有機JAS別表と認証機関・ラベルで使用可否を確認する

現場実践課題

自分の担当圃場で、今季使用予定の作業機(耕うん・播種・施肥・防除・収穫のいずれか)を1つ選び、作業前・作業中・作業後の条件と仕上がりを記録してください。

項目

記録例

作業機の種類

ロータリー耕うん機

作業日・天候

4月10日・曇り、前日降雨なし

土壌水分の状態(目視・触感)

やや湿り気あり、手で握ると崩れる程度

設定値(回転数・速度・深度)

PTO 540rpm、速度2km/h、深度12cm

仕上がり(砕土率・むら等)

砕土良好、一部に握りこぶし大の塊あり

気づき・次回への改善点

塊が残った箇所は水分がやや高かった可能性。乾きを待って再耕うんを検討

現場で使える!専門用語ミニ辞書

PTO(ぴーてぃーおー)
トラクターのエンジン動力を作業機に伝える回転軸の出力装置
ロータリー耕うん機(ろーたりーこううんき)
回転する爪で土を砕き混ぜる耕うん用の作業機
サブソイラ(さぶそいら)
心土を砕いて排水性・通気性を改善する心土耕機
ブロードキャスタ
肥料や種子を広範囲に飛散させて全面散布する施肥機・播種機の一種
条施肥(じょうせひ)
作物の根圏に近い位置に条状に肥料を施すこと
砕土率(さいどりつ)
耕うん後の土塊のうち、一定サイズ以下に砕かれた土の割合
窒素飢餓(ちっそきが)
未分解の有機物を微生物が分解する際に土中の窒素が一時的に消費され、作物が窒素不足になる現象
脱穀部(だっこくぶ)
コンバインなどで、刈り取った作物体から穀粒を分離する部分

参考(一次情報)

  • 農研機構「緑肥利用マニュアル」
  • 有機農産物の日本農林規格(有機JAS)および別表
  • みどりの食料システム戦略(農林水産省)
  • 気象庁「大気中の二酸化炭素濃度の観測結果」

EXERCISE

判断演習

本文の判断基準を使って答えてください。回答すると、選択肢ごとの理由が表示されます。

  1. Q1/2

    露地野菜の圃場でマメ科緑肥をすき込んでから10日が経過した。播種機による次作の播種予定日はあと3日後に迫っているが、すき込んだ緑肥の分解はまだ十分に進んでいないように見える。

    この状況での最も適切な判断はどれか。

  2. Q2/2

    粘質土壌の圃場で、前日に強い雨が降り、土壌表面を手で握ると水分が滲み出るほど湿っている状態である。予定していたロータリー耕うん作業をこのまま実施するかどうかを検討している。

    この状況で最も適切な判断はどれか。

学習状況を確認しています…

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