TECHNICAL MANUAL — 営農技術解説

品目構成と面積配分の決め方

本サイトはアフィリエイトプログラムに参加しており、記事内のリンク経由で商品やサービスが購入された場合、運営者が報酬を受け取ることがあります。掲載内容は公開情報をもとに独自に構成しています。

PRE-CHECK

事前チェック

読む前に、今の判断を確かめます。すでに判断できる場合は、判断演習へ進めます。

  1. Q1/2

    前提ユニット「販路から逆算する作付け計画」の考え方に基づくと、品目構成と面積配分を検討し始める際、最初に固定すべきものはどれですか。

  2. Q2/2

    有機栽培(化学合成農薬を使わない栽培)の特徴として、品目構成でリスク分散が重要とされる理由に最も関係するものはどれですか。

この章で学ぶこと(学習目標)

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 収益性(単価・収量・回転率)とリスク(気象・病害・販路・労働力)の両面から、品目構成を根拠を持って選べる
  • 圃場面積を品目・輪作・緑肥に配分し、年間の作付け計画に落とし込める
  • 品目構成を毎年見直すための記録項目と判断基準を説明できる

所要時間の目安: 90分(前提ユニット「販路から逆算する作付け計画」の内容を終えていること)

結論

品目構成と面積配分は、次の順序で決めます。

  1. 前提ユニットで決めた「販路ごとの必要作付け」を品目別に並べ、需要側の制約(出荷先・数量・時期)を固定する
  2. 品目ごとに収益性(単価×収量÷作付け期間)を試算し、主力品目(収益の柱)を1〜3品目に絞る
  3. 主力品目に偏りすぎるリスク(気象被害・価格変動・労働集中)を洗い出し、リスク分散のための副次品目を2〜5品目加える
  4. 輪作と緑肥に必要な面積を先に確保し、残りを主力・副次品目に配分する
  5. 労働力のピーク(定植・収穫期)が品目間で重ならないよう、作付け時期をずらして面積配分を調整する
  6. 1年ごとに収益・労働記録を見直し、構成比率を段階的に修正する(一度に大きく変えない)

原理: なぜ品目構成とリスク分散が土台になるのか

収益性だけで決めると崩れる理由

単価が高い品目だけに集中すると、天候不順や病害による減収、販路側の需要変動の影響をそのまま全額受けます。有機栽培は化学合成農薬を使わないため、病害虫や天候による減収の振れ幅が慣行栽培より大きくなる場面があります。複数品目・複数時期に分散することで、ある品目が不作でも他の品目の収益で経営全体を支えられます。これは保険と同じ考え方で、農業経営学でポートフォリオ分散と呼ばれます。

輪作と緑肥が面積配分に先に入る理由

同じ科の作物を同じ圃場で連作すると、特定の病原菌(土壌伝染性の糸状菌など)や線虫が土壌中に蓄積し、連作障害が起きやすくなります。輪作で科を変えることで、特定の病原菌・害虫が増え続けるのを防げます。また緑肥は、マメ科であれば窒素固定による土づくり、イネ科であれば収穫後に残った余剰養分の吸収・保持と有機物供給、どちらも根による物理性改善と雑草抑制の働きを持ちます。緑肥すき込みから次作定植までは、分解と窒素の再無機化が進むまでの期間として3〜4週間を標準の目安とします(農研機構の緑肥利用マニュアルに基づく)。この期間、圃場は作付けに使えないため、面積配分の計算に先に組み込む必要があります。

労働力のピークが品目選びを左右する理由

定植・収穫などの作業は植物の生育ステージに縛られるため、時期をずらせません。複数品目を選ぶ際、果菜類の収穫最盛期と葉物の定植最盛期が重なるなど、労働力の需要が集中する組み合わせを避けることで、同じ面積でも収穫適期を逃さず、食味・形状など収穫物の品質(規格・等級)を保てます。収穫適期を逃すと、過熟による食味低下や形状不良で規格外となり、単価に直結する収益が下がります。

判断の実例

実例1: 主力品目への偏重を見直した例

状況: 直売所向けにトマトを作付け面積の70%に集中させていたところ、台風による倒伏と裂果で年間収益の40%を失った。

判断: 翌年はトマトの比率を40%に下げ、空いた面積に根菜類(ダイコン・ニンジン)と緑肥(イネ科)を配分した。

理由: トマトは収益性が高い一方、風害・裂果のリスクが集中している。根菜類は地上部の気象リスクが相対的に低く、収穫時期もトマトとずれるため労働力も分散できる。緑肥区画は翌々作の土づくりに充て、年単位で土壌を回復させる計画とした。

実例2: 輪作・緑肥の面積を先に確保した例

状況: 全面積を野菜の作付けに充てる計画を立てたところ、同じ圃場でアブラナ科を3年連続作付けする計画になっていた。

判断: 圃場全体の約20%を毎年、緑肥(マメ科またはイネ科)とアブラナ科以外の輪作品目に固定して配分した。

理由: アブラナ科の連作は根こぶ病など土壌伝染性病害のリスクを高める。輪作と緑肥に必要な面積を先に固定しないと、販路の都合で後回しにされ、連作障害対策が形骸化しやすい。

実例3: 労働力ピークの重複を避けた例

状況: 7月にキュウリの収穫最盛期とハクサイの定植最盛期が重なり、どちらも作業が遅れて規格外品が増えた。

判断: ハクサイの作付け時期を2週間遅らせ、定植最盛期をキュウリの収穫最盛期からずらした。

理由: 労働力は圃場面積ではなく人数で制約される。同時期に最盛期が重なる品目同士を同じ面積比率で持つと、どちらも適期作業ができず、食味・形状の両方で品質が落ち、単価が下がる。

手順と判断基準

  • [ ] 前提ユニットで決めた販路ごとの必要作付け(品目・数量・時期)を一覧にする
  • [ ] 品目ごとに収益性(単価×見込み収量÷作付け期間)を試算し、上位1〜3品目を主力候補とする
  • [ ] 主力候補の気象・病害リスクを書き出す。同じリスク要因(例: 多雨に弱い)を持つ品目同士を主力に重ねない
  • [ ] 圃場全体の面積のうち、輪作・緑肥に充てる比率を都道府県の基準・指導を踏まえて先に確保する(目安として全体の2〜3割程度を輪作・緑肥に回す経営例が多いが、固定の数値は都道府県の普及指導員・JAS認証機関の助言で確認する)
  • [ ] 緑肥すき込みから次作定植まで3〜4週間の期間を作付けカレンダーに組み込む
  • [ ] 主力品目の定植・収穫最盛期を書き出し、副次品目の最盛期と重ならないか確認する。重なる場合は作付け時期か品目を調整する
  • [ ] 土壌群(黒ボク土・低地土・砂質土など)や気候帯による適性品目の違いを確認し、無理な品目選定をしていないか見直す
  • [ ] 1年後に収益・労働時間・病害発生の記録を基に構成比率を見直す。一度の見直しで主力品目の面積比率を大きく変えすぎない(前年比で急激な変更は、販路・労働の両面でひずみを生みやすい)

よくある失敗と対策

失敗

なぜまずいか

対策

単価の高い品目だけに面積を集中させる

気象被害や病害で一度に大きな収益を失うリスクが高い

収益性とリスク要因を分けて評価し、リスク要因が異なる品目を組み合わせる

輪作・緑肥の面積を後回しにする

連作障害や地力低下が年々進み、結果的に収量・品質が下がる

輪作・緑肥の面積を販路の都合より先に固定して確保する

労働力のピークを確認せず品目を決める

定植・収穫適期を逃し、規格外品が増えて単価が下がる

品目ごとの最盛期を一覧にし、重複を避けて作付け時期をずらす

地域の土壌群・気候帯を無視して品目を選ぶ

適性のない品目は生育不良や品質低下を招きやすい

土壌群・気候帯に合った品目を基本に置き、都道府県の基準・指導を確認する

前年の構成比率を一度に大きく変える

販路との契約や労働体制が追いつかず、混乱を招く

記録を基に段階的に比率を修正する

まとめ(判断基準の再掲)

  1. 販路側の必要作付けを固定し、品目ごとの収益性を試算する
  2. 収益性だけでなく、気象・病害・労働力のリスク要因が重ならないよう主力品目を分散する
  3. 輪作・緑肥の面積を販路の都合より先に確保する
  4. 緑肥すき込みから定植まで3〜4週間を見込む
  5. 品目間の定植・収穫最盛期の重複を避け、労働力を分散する
  6. 1年ごとの記録を基に、構成比率を段階的に見直す

現場実践課題

自分の圃場で、現在(または計画中)の品目構成と面積配分を一覧にし、次の表に記録してください。

品目

作付け面積(a)

作付け期間

想定単価

想定収量

主な気象・病害リスク

定植最盛期

収穫最盛期

(記入例) トマト

20

4〜9月

○○円/kg

○○kg/a

台風・裂果

5月中旬

7〜8月

記入後、以下を確認してください。

  • リスク要因が重複する品目同士が、面積の大部分を占めていないか
  • 輪作・緑肥に充てる面積が、他の品目の作付け計画より先に固定されているか
  • 定植・収穫最盛期が重なる品目の組み合わせがないか

現場で使える!専門用語ミニ辞書

ポートフォリオ分散
複数の品目・時期に収益源を分けることで、特定のリスクが経営全体に与える影響を小さくする考え方
連作障害
同じ科の作物を同じ圃場で続けて作付けすることで、特定の病原菌・害虫が土壌中に蓄積し、生育不良や減収が起きる現象
輪作
同じ圃場で異なる科の作物を計画的に順番に作付けし、連作障害を防ぐ栽培方法
緑肥
収穫を目的とせず、すき込んで土壌に有機物や養分を供給するために栽培する作物の総称
労働力のピーク
定植・収穫など、特定の作業が集中する時期。品目間で重ならないよう調整する必要がある
土壌群
黒ボク土・低地土・砂質土など、成り立ちや性質で分類した土壌の種類。適性のある品目や施肥基準が異なる

参考(一次情報)

  • 農研機構「緑肥利用マニュアル」
  • 農林水産省「有機農業の推進に関する法律」及び有機JAS規格関連資料
  • 農林水産省「みどりの食料システム戦略」
  • 都道府県の施肥基準・栽培暦(普及指導センター発行資料)

EXERCISE

判断演習

本文の判断基準を使って答えてください。回答すると、選択肢ごとの理由が表示されます。

  1. Q1/2

    1.5haの露地野菜圃場で、ナス(1.0ha)とピーマン(0.3ha)を主力品目とし、残り0.2haを緑肥区画とする計画を立てた。ナスとピーマンはどちらも多湿環境で疫病・灰色かび病にかかりやすく、収穫最盛期もどちらも7〜8月に集中している。

    この品目構成について、最も適切な判断はどれですか。

  2. Q2/2

    新規に3haの圃場を借り受けた法人が、来年の作付け計画としてキャベツとブロッコリー(ともにアブラナ科)で圃場全体の80%を占める計画を立てた。残り20%は緑肥用に確保する予定だが、緑肥区画は毎年固定せず、その年の販路都合で余った圃場を充てる方式にしている。

    この計画について、最も適切な判断はどれですか。

学習状況を確認しています…

アグリコメ 0

現場のプロの視点で、この記事への意見や経験を共有しましょう。

この記事、あなたの現場ではどう受け止めましたか? その一言が、ほかの農家の判断材料になります。

まだコメントはありません。最初の見解を書いてみませんか?

NOUKARA TOOLS

経営の次の一手を、数字で確かめる。

作付け収益シミュレーター16品目の収益性を比べて、来期の作付け計画の材料にできます使ってみる →すべてのツールを見る →
← 営農技術ライブラリへ戻る