広告戦略職、AIで逆に価値上昇
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結論:AIが仕事を奪う一方で、戦略職の『価値』が再評価され始めている
広告業界ではここ1年、持株会社の再編や大規模な人員削減が相次いだ。Emarketerによると、2025年8月から2026年8月の間に業界全体で6,900人の雇用が失われたという。背景の一つがAIの急速な普及だ。データ分析からキャンペーン制作まで、AIはほぼすべての業務領域に浸透し、多くの経営層が将来に不安を抱いている。
それでも、WARCの『Future of Strategy 2026』レポートでは、代理店側のストラテジスト(戦略担当者)の66%が「楽観視できる理由がある」と回答した。人員削減の嵐が続いた業界で、なぜ戦略職には明るい兆しが見えているのか。コストの壁や雇用不安という現実を抱えながらも、現場がどう活路を見出そうとしているのかを整理する。
AIツールの導入を検討する企業は公式サイトを見るで各社の機能比較から始めるのも一つの方法だ。
WARC調査が示す数字:楽観と懸念が同居する現場
WARCは489人の代理店側ストラテジストを対象に2026年8月に調査を実施した。主な結果は以下の通り。
- クライアントへの戦略的影響力:50%(2025年の41%から上昇)
- AIのおかげでより高度な戦略業務に時間を割けると回答:65%
- AIが戦略を「人間視点」に回帰させると考える:55%
- 短期的に楽観視できる理由があると回答:66%
- 長期的にAIに置き換えられることを懸念:56%(前年の41%から上昇)
短期楽観と長期懸念の対比
項目 | 割合 | 前年比 |
|---|---|---|
クライアントへの戦略的影響力 | 50% | 41%から上昇 |
AIで高度な業務に時間を割けると回答 | 65% | 非開示 |
長期的にAIに代替される懸念 | 56% | 41%から上昇 |
WARC Strategyのコンテンツディレクター、Lena Roland氏は「問題が解決したわけではないが、潮目が変わりつつある感覚はある」と説明する。成長が難しい時代だからこそ、クライアント側が人間の洞察に根ざした思考の価値を再認識し始めているという。
なぜ『AI活用』が戦略職の追い風になっているのか
皮肉なことに、戦略職の自信を支えているのはAIそのものだ。調査では65%のストラテジストが「AIのおかげでより繊細で戦略的な仕事に時間を使えるようになった」と回答している。Roland氏は「AIは“今の世界”を理解する助けになるが、戦略家は“これからの世界”を描く役割を担う」と位置づける。
ただし楽観は長くは続かないとみられる。56%(前年41%)が、将来的にAIが十分進化すれば自分たちの役割が代替されると懸念しており、短期的な安心と長期的な不安が同居している構図だ。
業務構造の変化:アカウントエグゼクティブとの関係
マーケティングコンサルティング企業Farmer & Companyの会長兼CEO、Michael Farmer氏は、AIが「もろ刃の剣」になり得ると指摘する。戦略職がクライアントとの関係を一段上に引き上げるために使っているのと同じAIツールを、アカウントエグゼクティブ(営業担当)も活用できるからだ。
Farmer氏によれば、過去30年ほどでアカウントエグゼクティブの役割は、プログラマティック取引の普及やメディア・クリエイティブ業務の分離、1990年代後半から2000年代にかけての戦略職の登場によって縮小してきた。かつて戦略職は「消費者の良心」と呼ばれ、クライアントから渡されたブリーフ(広告の指示書)を、ブランドの利益に沿う形で書き直す役割を担っていた。しかし今では、そのブリーフをAIが戦略職と同等かそれ以上の精度で作成できるようになりつつある。
戦略職が生き残るために必要なこと
WARCの調査では、ストラテジスト自身も危機感を持っていることがわかる。
- 事業へのインパクトを証明する強い根拠が必要だと回答:80%
- 新しい価値提案・報酬モデルが必要だと回答:57%
Roland氏は「戦略という専門分野は、これまで支援機能やおまけのサービスとして扱われがちだった」と指摘し、今こそブランドのコミュニケーションだけでなく事業の方向性そのものを形作る“成長パートナー”になる機会だと語る。Farmer氏も「AIは大きな機会だが、それを活かせるかどうかは戦略家としての力量次第だ」と付け加えている。
日本のスタートアップ・アグリテック企業への応用
この事例は広告代理店の話だが、構造自体はどの業界のベンチャー経営にも当てはまる。AIがルーティン業務(データ集計、資料作成、定型文の生成)を代替するほど、人間にしかできない「意思決定」「現場の文脈理解」「優先順位づけ」の価値が相対的に高まるという点だ。
日本の農業ベンチャーやアグリテック企業であれば、たとえば気象データや生育データの解析、販促文・提案書の下書きはAIに任せ、浮いた時間を「どの作物・どの顧客に投資すべきか」という経営判断や、生産者との信頼構築に充てる、という置き換えが考えられる。ただし導入には前提がある。まずAIが出した分析結果を鵜呑みにせず検証できる最低限のITリテラシーを持つ人材が社内に必要であること、次に無料〜数千円/月のAIツールから小さく試し、効果を見ながら契約を拡大するなど、コスト感を見誤らないことだ。WARCの調査が示す「戦略の価値を証明する根拠が必要」という課題は、人員もリソースも限られる日本のベンチャーほど切実に当てはまるだろう。
まとめ
広告業界では人員削減とAI導入が同時並行で進む一方、戦略職の66%は短期的な楽観を示しつつ、56%が長期的な代替懸念を抱えるという二面性が浮き彫りになった。重要なのは、AIが代替するのは定型業務であり、人間の判断・洞察・優先順位づけの価値はむしろ相対的に高まるという構造だ。この構造は日本のスタートアップやアグリテック企業の経営判断にも示唆を与える。AIに業務を任せきりにするのではなく、浮いた時間をどの意思決定に振り向けるかが問われている。あなたの現場では、AI導入で生まれた時間を何に使っていますか。あなたの現場の声を、記事下のアグリコメで聞かせてください。
現場で使える!専門用語ミニ辞書
- WARC(World Advertising Research Center)
- 広告・マーケティング分野の調査機関で、業界動向レポートを発行する。本記事の調査データの出典。
- ストラテジスト
- 広告代理店で戦略立案を担当する職種。クライアントの課題を分析し、施策の方向性を決める役割を持つ。
- アカウントエグゼクティブ
- クライアントとの窓口となり、案件の進行管理や提案を行う営業寄りの職種。
- プログラマティック取引
- 広告枠の売買を人手を介さず自動入札・自動取引するしくみ。業務の自動化・効率化の代表例。
- ブリーフ
- クライアントから代理店に渡される、施策の目的や条件をまとめた指示書。戦略立案の出発点となる資料。
参考
Where agency strategists see opportunity as AI challenges their worth(Marketing Dive)
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アグリコメ 1
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編集部ノウカラ編集部
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