体験型ポップアップで通年集客
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結論:体験はイベントではなく「コンテンツ工場」
米アパレル・ホームグッズ大手ランズエンドが、創業地シカゴで期間限定の体験型ポップアップ「Holiday Tree Farm by Lands' End」を開催した。狙いは単発の話題作りではなく、ブランドコラボと組み合わせて長期的に使えるコンテンツと顧客接点を生み出す「オールウェイズオン(常時稼働型)」マーケティングの一部に体験を組み込むことだ。
体験型マーケティングは費用対効果が見えにくく、特に資金に限りあるスタートアップにとっては「イベントに投資すべきか、広告に回すべきか」という悩ましい判断がつきまとう。ランズエンドの事例は、この判断をどう構造化すればよいかのヒントになる。
シカゴで仕掛けた「ホリデーツリーファーム」の中身
ポップアップは2026年11月6日から8日までの3日間、ランズエンド発祥の地であるシカゴで開催された。コンセプトは、同社が過去に使っていた「クリスマスに必要なものは木以外すべて揃う」という広告コピーに由来する。
会場にはトートバッグのカスタマイズブース、ビンテージ風フォトブース、くつろげるラウンジなど複数の体験ステーションが設けられ、いずれもアウターやパジャマといった同社の主力商品カテゴリーと結びつけられている。
ステーション・企画 | 提携先 | 内容 |
|---|---|---|
Holiday Drink Lodge | La Colombe(コーヒーチェーン) | 飲料ブース |
Sweater Swap | ThredUp(リセールプラットフォーム) | 中古セーターを新品と交換 |
Miles & Monograms | Lindi Presta/Running the Runway(ランニングクラブ) | ランニングイベント |
絵本の読み聞かせ・サイン会 | Lori Orlinsky(地元児童書作家) | 地域住民向け企画 |
過去にはコンビニチェーンWawaやライフスタイルブランドT&T Twin Talkとのコラボも実施しており、直近の決算説明会でSNSトラフィックや店舗売上を押し上げたマーケティング施策として紹介されている。
なぜブランドコラボは当たり外れが出るのか
3月にランズエンド初のCMOに就任したサラ・シルベスター氏は、コラボが機能する条件について次のように説明する。
- 知名度の高いブランド同士でも、顧客層や意図の重なりがなければ機能しにくい
- 自社または相手の主力商品カテゴリーに必ず紐づける
- 「ノイズを突破する」ための驚きや楽しさを重視する
地元シカゴ出身のランナーや児童書作家との提携は、全国的な知名度拡大よりも地域コミュニティとのつながり強化を狙ったものだ。物理的に会場に行けない層にも、SNSコンテンツを通じて体験を共有する設計になっている。
「常時稼働」マーケティングという発想
シルベスター氏は、体験型施策を単発のPRイベントではなく、年間を通じたマーケティングミックスの一部として位置づける。
「体験への投資は広告出稿より高くつく。だからこそ、会場に来る数千人との接点だけでなく、シーズンを通して使えるコンテンツを作ることが重要だ」と語る。ペイドメディア、SNS広告、検索、インフルエンサー、ブランドコラボ、体験を一つのブランドストーリーに統合する考え方だ。年に3〜4回、ブランドの核を明確に示す大きな瞬間を作ることが鍵になるという。
ランズエンドは2026年第2四半期に売上高が前年比2.7%増となり、ブランド管理会社WHP Globalとのジョイントベンチャー設立を含むターンアラウンド施策の効果が表れ始めている。今回のポップアップも、下半期に向けた施策の一環と位置づけられている。
スタートアップ・農業ベンチャーへの応用点
この事例は海外アパレル企業のものだが、構造としては日本のスタートアップやアグリテック・農業ベンチャーにも応用できる余地がある。
- 既存アセットとの接続:体験の各ブースを主力商品カテゴリーに紐づけたように、農業ベンチャーであれば自社の主力作物や技術デモに体験を結びつけることで、単なる集客イベントで終わらせない設計がしやすい。
- 提携先選びの基準:顧客層や意図が重なる相手を選ぶという原則は、資金力に乏しいベンチャーほど重要になる。知名度だけで提携先を決めると、投資対効果が見えにくくなる。
- コンテンツの使い回し前提の設計:体験を一度きりのイベントにせず、撮影・SNS展開を前提に設計すれば、広告費の一部を体験に振り向ける判断がしやすくなる。
ただし前提条件もある。体験型施策は会場設営や人員確保にコストがかかり、地方拠点の農業ベンチャーでは都市部ほどの来場数を見込みにくい。ITリテラシー面では、SNS運用やコンテンツ編集の体制がないまま実施しても「コンテンツ工場」として機能しない点には注意が必要だ。まずは小規模な体験イベントで、SNS投稿用の素材をどれだけ継続的に生み出せるかを検証してから規模を広げる進め方が現実的だろう。
まとめ
ランズエンドの事例は、体験型マーケティングを単発のPRではなく、年間を通じたコンテンツと顧客接点の供給源として設計している点が特徴だ。ブランドコラボの選定基準や主力商品との接続という考え方は、資金に限りある日本のスタートアップや農業ベンチャーにも応用可能だが、実施体制とコンテンツ活用の仕組みが整っていなければ投資効果は出にくい。あなたの事業でも、体験施策を一度きりで終わらせずコンテンツ資産として活用できているだろうか。あなたの現場の声を、記事下のアグリコメで聞かせてください。
現場で使える!専門用語ミニ辞書
- CMO(シーエムオー・最高マーケティング責任者)
- 企業のマーケティング戦略全体を統括する役職。広告・ブランド・顧客体験などの意思決定権を持つ。
- ジョイントベンチャー(JV)
- 複数の企業が共同で出資・運営する事業体のこと。リソースやノウハウを分担しながら新規事業やブランド再建を進める際に使われる。
- 体験型マーケティング(エクスペリエンシャル・マーケティング)
- 商品やブランドを広告だけでなく、実際の体験・イベントを通じて伝える手法。SNS拡散やコンテンツ制作の起点としても使われる。
- オールウェイズオン(常時稼働型)マーケティング
- 単発キャンペーンではなく、年間を通じて複数のチャネルを連動させ継続的に発信し続けるマーケティングの考え方。
- リセール(再販)プラットフォーム
- 中古品の売買・交換を仲介するサービス。ブランドが環境配慮やサステナビリティ訴求の文脈で提携することが増えている。
- ブランドコラボレーション
- 異なるブランド同士が共同で商品や企画を展開する取り組み。顧客層の重なりや目的の一致が成功の条件とされる。
参考
How Lands' End's holiday pop-up feeds an always-on marketing strategy(Marketing Dive)
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アグリコメ 1
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編集部ノウカラ編集部
【編集部より】皆さんの事業では、体験型イベントとSNS・広告費のバランスをどう決めていますか?規模や業種もあわせて教えてください。