TECHNICAL MANUAL — 営農技術解説

品質検査と等級判定の考え方

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PRE-CHECK

事前チェック

読む前に、今の判断を確かめます。すでに判断できる場合は、判断演習へ進めます。

  1. Q1/2

    有機JASマークと出荷規格上の「等級」の関係について、最も正しい説明はどれですか。

  2. Q2/2

    前章「調製・乾燥・貯蔵の管理基準」の内容を踏まえると、貯蔵管理と本章の品質検査の関係について最も適切な説明はどれですか。

この章で学ぶこと(学習目標)

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 品質検査の項目(外観・形状・サイズ・食味関連指標・病害虫痕・異物混入など)を整理し、等級区分の考え方を説明できる
  • 検査結果から出荷可否・等級判定を一人で下し、その理由を記録・説明できる
  • 判定に迷うロット(境界線上の個体が多い場合など)への対応手順を選べる

所要時間の目安: 60〜90分(圃場・選果場での実地確認を含めると半日)

結論

品質検査と等級判定は、次の順番で行う。

  1. 安全性の確認を最優先する: 異物混入、農薬・資材の使用記録と有機JASでの適合性、病害による食用不適の有無を確認する。これが満たされない場合は等級以前に出荷不可とする。
  2. 規格書・出荷先の基準を確認する: 全農規格、JA共選基準、契約先の独自規格など、出荷先が定める等級区分の基準書を手元に用意する。
  3. 外観・形状・サイズで一次区分する: 裂果・変形・着色不良・病害虫痕の有無と程度を基準書の写真・数値と照合する。
  4. 食味関連指標を確認する(品目による): 糖度(Brix)、酸度、硬度など、出荷先が求める指標があれば測定し基準値と照合する。
  5. ロット全体のばらつきを評価する: 抜き取り検査の結果が基準内でも、ばらつきが大きい場合は再選別またはロット分割を検討する。
  6. 判定理由を記録する: 等級・等外とした理由を数値と写真で残し、次回作の栽培・管理にフィードバックする。

迷った場合は、安全性 > 出荷先基準 > 外観 > 食味 の優先順位を崩さないことを基本とする。

原理: なぜ品質検査と等級判定が必要か

商品価値は規格・単価に直結する

収穫物の食味と形状は、消費者や実需者が直接評価する部分であり、規格外は単価が大きく下がるか、出荷自体ができない。有機栽培であっても、慣行栽培と同じ出荷規格(サイズ・形状・外観)で評価されることが多く、栽培技術の巧拙がそのまま等級に反映される。等級判定は単なる選別作業ではなく、その作型・圃場の管理が適切だったかを示す指標でもある。

栄養生理と外観・食味の関係

生育中の栄養バランスの乱れは、収穫物の外観や食味に跡を残す。例えば、窒素過多は葉の同化産物が貯蔵器官(果実・塊茎・種子)に偏らず、食味の薄さや軟弱化、貯蔵性の低下として現れやすい。カリウム不足は果実の糖度や着色不良に関係することが知られている。器官ごとに見ると、根の吸収能力・茎の転流・葉の同化という役割分担のどこかに不調があれば、最終的に貯蔵器官である果実や塊茎の品質に表れる。等級判定で外観不良が多発した場合は、前段階(施肥設計・水管理・病害虫防除)に原因がないかを遡って確認する視点が必要になる。

病理・生理障害と等級の関係

病害虫による傷・変色は、見た目の等級を直接下げるだけでなく、貯蔵中の腐敗リスクも高める。前章(調製・乾燥・貯蔵の管理基準)で扱った乾燥・貯蔵管理が不十分な場合、出荷直前の検査で初めて品質劣化が発覚することもある。品質検査は出荷の最終関門であると同時に、調製・貯蔵工程の管理が機能していたかを確認する機会でもある。

有機JASにおける品質表示と等級の関係

有機JASマークは「栽培方法」の認証であり、サイズ・形状などの等級とは別の制度である。有機JAS認証を受けていても、規格外(サイズ不揃い・形状不良など)は一般の等級区分に従って等級外・加工用などに仕分けられる。認証の有無と等級は独立した軸であることを理解しておく。

判断の実例

実例1: 糖度は基準を満たすが外観に裂果が目立つケース

状況: トマトの出荷前抜き取り検査で、糖度(Brix)は出荷先基準を満たしていたが、サンプル20個中4個(20%)に裂果が見られた。

判断: 裂果のある個体は等外または加工用に仕分け、裂果のない個体のみを規格品として出荷する。ロット全体を等外にはしない。

理由: 裂果は個体ごとの現象であり、ロット全体の食味・安全性には影響しない。出荷先基準書に「裂果は不可」と明記されている場合は、個体単位での選別で対応するのが妥当であり、出荷量を不必要に落とさずに済む。

実例2: 抜き取り検査でサイズのばらつきが大きいケース

状況: ニンジンの抜き取り検査で、規格サイズ(L・M・S)の基準には収まっているが、同一ロット内で最大径と最小径の差が基準書の想定より大きかった。

判断: 出荷前にサイズ別の再選別を行い、ロットをL・M・Sに分けてから出荷する。

理由: ばらつきが大きいまま混在出荷すると、実需者側での再選別コストが発生し、次回以降の取引評価に影響する。生産側で選別しておくことで、単価の安定と信頼関係の維持につながる。

実例3: 病害虫痕が見られるが可食部に影響がないケース

状況: カボチャの表皮に軽微なカイガラムシ痕があるが、果肉には影響がなく、出荷先基準書では「表皮の軽微な痕は等級に影響しない」と明記されている。

判断: 規格品として出荷可とする。

理由: 基準書に明記された許容範囲内であれば、過剰に等外へ回すことは出荷量の損失になる。基準書の記載を優先し、担当者の主観で厳しくし過ぎないことが、安定出荷と収益の両立につながる。

手順と判断基準

  1. 安全性チェック(最優先・必須) - 異物混入なし → 次へ - 使用資材が有機JAS別表に適合しているか、認証機関への確認記録があるか → なければ出荷保留 - 病害による食用不適(腐敗・カビなど)がないか → あれば即座に除外
  2. 基準書の確認 - 出荷先(JA・契約先など)の最新の等級区分表を手元に用意する - 地域・出荷先ごとに基準が異なるため、都道府県やJAの基準で確認する
  3. 外観・形状の一次区分 - 裂果・変形・着色不良・病害虫痕の有無と程度を基準書と照合する - 基準書の写真・数値例と比較し、迷う個体は複数人で確認する
  4. サイズ区分 - ノギス・ふるいなど基準書の指定方法で測定する - 同一ロット内のばらつきが大きい場合は再選別・ロット分割を検討する
  5. 食味関連指標の測定(品目・出荷先が求める場合) - 糖度計・酸度計などで測定し、基準値と照合する - 測定は複数サンプルの平均値で判断し、1個の値で判定しない
  6. 抜き取り検査の母数設計 - 抜き取り数が少なすぎるとロット全体の品質を代表できない。出荷先の検査要領または自社の過去実績に基づいた母数を設定する
  7. 判定と記録 - 等級・等外・出荷不可を決定し、理由(数値・写真)を記録する - 記録は次作の施肥設計・防除計画の見直しに使う

よくある失敗と対策

失敗

なぜまずいか

対策

抜き取り数が少なく全体を判定する

ロット内のばらつきを見落とし、出荷後にクレームが発生する

出荷先の検査要領または過去実績に基づいた母数を確保する

担当者の主観で基準を厳しくし過ぎる

出荷可能な規格品まで等外に回し、収益を損なう

基準書の数値・写真例を優先し、複数人で確認する体制を作る

安全性確認を後回しにする

使用資材の適合性未確認のまま出荷し、認証取消や回収リスクを招く

安全性チェックを判定フローの最初に固定する

等級判定の理由を記録しない

次作の栽培改善につながらず、同じ品質問題を繰り返す

判定理由を数値・写真で記録し、栽培管理にフィードバックする

貯蔵中の劣化を出荷直前まで把握しない

急な等級低下で出荷計画が崩れる

前章の貯蔵管理基準に沿った定期点検を継続する

まとめ(判断基準の再掲)

  1. 安全性の確認(異物・資材適合性・食用不適)を最優先する
  2. 出荷先の基準書を基準に判定し、担当者の主観で厳しくし過ぎない
  3. 外観・形状・サイズ・食味指標の順で一次区分し、迷う個体は複数人で確認する
  4. ロット内のばらつきが大きい場合は再選別・分割を検討する
  5. 判定理由を数値と写真で記録し、次作の管理改善に使う

現場実践課題

自分の圃場・選果場で、直近の出荷ロットについて品質検査記録表を作成する。抜き取りサンプル(出荷先の検査要領に基づく数量、または最低20個程度)について、外観・サイズ・食味指標・等級判定・理由を記録し、等外率が高い場合はその原因(施肥・水管理・病害虫防除のどの段階か)を推測して記録する。

検査日

品目

サンプル数

規格品数

等外数

主な等外理由

推測される原因

例: 10/15

トマト

20

16

4

裂果

収穫前の急な灌水

現場で使える!専門用語ミニ辞書

等級(とうきゅう)
外観・サイズ・品質に基づいて収穫物を区分する規格上の分類
抜き取り検査(ぬきとりけんさ)
ロット全体から一部のサンプルを抽出して品質を確認する検査方法
Brix(ブリックス)
糖度を示す指標。糖用屈折計で測定する
裂果(れっか)
果実の表皮が割れる生理障害。急激な水分変動などが原因となりやすい
ロット
同一条件で収穫・調製された出荷単位のまとまり
規格外(きかくがい)
出荷先の等級基準を満たさない収穫物。加工用や等外品として扱われる

参考(一次情報)

  • 農林水産省「有機農業の推進に関する法律」及び有機JAS規格(農林物資の規格化等に関する法律に基づく有機JAS規格)
  • 農林水産省「みどりの食料システム戦略」
  • 各都道府県・JAの青果物出荷規格・等級区分表
  • 農研機構 野菜生理障害に関する技術資料

EXERCISE

判断演習

本文の判断基準を使って答えてください。回答すると、選択肢ごとの理由が表示されます。

  1. Q1/2

    イチゴの出荷前抜き取り検査で、サンプル30個のうち3個(10%)に軽度の変形果が見られたが、糖度(Brix)はすべて出荷先基準を満たしていた。出荷先基準書には「変形果は不可」と明記されている。

    このロットに対する最も適切な判断はどれですか。

  2. Q2/2

    ジャガイモの抜き取り検査で、サンプルはすべてS・M・Lいずれかの規格サイズの範囲内に収まっていたが、同一ロット内で最大径と最小径の差が出荷先基準書の想定よりも大きいことが確認された。

    このロットに対する最も適切な判断はどれですか。

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