TECHNICAL MANUAL — 営農技術解説

玉ねぎ 乾燥と貯蔵性のコントロール

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PRE-CHECK

事前チェック

読む前に、今の判断を確かめます。すでに判断できる場合は、判断演習へ進めます。

  1. Q1/2

    玉ねぎの品種特性と貯蔵性の関係について、正しい説明はどれか。

  2. Q2/2

    収穫後の農産物の貯蔵管理において、腐敗や品質低下を防ぐための基本的な環境要因の組み合わせとして最も適切なものはどれか。

この章で学ぶこと(学習目標)

この章を終えると、次のことができるようになります。

  • 玉ねぎの倒伏(とうふく)から収穫、予備乾燥、本乾燥までの工程を、気象条件と品種特性に合わせて判断できる
  • 貯蔵中の萌芽(ほうが)・腐敗・病害の発生要因を理解し、貯蔵環境(温度・湿度・換気)を設計できる
  • 貯蔵性の高い玉ねぎを作るための、収穫前からの管理ポイントを説明できる

所要時間の目安: 60〜75分(圃場観察・記録の実習を含めると半日)

結論

玉ねぎの貯蔵性コントロールは、以下の順序で判断します。

  1. 品種特性の確認を先に行う: 早生(わせ)品種は貯蔵性が低く早期出荷向き、中生〜晩生品種は貯蔵性が高い。作型と出荷計画に合わせて品種を選定した時点で、貯蔵の戦略は半分決まっている
  2. 収穫適期の判断: 全体の7〜8割の株で葉が倒伏した時点を目安にする(品種・地域差があるため都道府県の基準で確認)。倒伏前の強制的な収穫は未熟球となり貯蔵性を下げる
  3. 予備乾燥(キュアリング)の実施: 収穫後、畑の上またはネット・コンテナ上で数日〜1週間程度、球を乾燥させ、首部(くび)を締める。降雨時は屋根下に移動する
  4. 本乾燥と選別: 外皮が十分に乾いてパリッとした状態になるまで乾燥を続け、傷球・分球・首の太い球(首太り球)を選別して除く。これらは貯蔵中の腐敗の起点になりやすい
  5. 貯蔵環境の設計: 風通しの良い冷暗所を基本とし、必要に応じて予冷・低温貯蔵施設を使う。高温多湿は腐敗を、低温多湿は萌芽や病害を招くため、温度と湿度を組み合わせて管理する
  6. 貯蔵中のモニタリング: 定期的に腐敗球・萌芽球を除去し、庫内の温湿度を記録する

原理: なぜ乾燥と貯蔵環境が品質を左右するのか

球の構造と水分生理

玉ねぎの可食部は、葉の基部が肥大した鱗茎(りんけい)である。植物の器官でいえば葉に由来する貯蔵器官であり、養分と水分を蓄える役割を持つ。収穫直後の球は水分含量が高く、表面の外皮(乾燥した葉鞘)が薄いため、微生物の侵入や水分の蒸散を防ぐバリアが未完成の状態にある。乾燥(キュアリング)の目的は、この外皮を十分に乾かして保護層として機能させ、同時に首部の組織を締めて病原菌の侵入口を塞ぐことにある。

首部が十分に締まっていない球(首の切り口が太く柔らかい球)は、呼吸や水分の出入りが活発なままで、貯蔵中に軟腐病菌などの侵入を受けやすい。これは収穫前の肥大期における窒素過多とも関係し、過繁茂な株は首が太くなりやすい。

休眠と萌芽のメカニズム

玉ねぎの球は収穫後、一定期間の生理的休眠に入る。休眠期間は品種によって異なり、早生品種は休眠が浅く短いため萌芽しやすく、晩生品種は休眠が深く長いため貯蔵に向く。休眠が明けると、球内に蓄えられた養分が茎の生長点(芯)に転流し、萌芽(芽が伸びる現象)や発根が始まる。この転流が進むと、可食部である鱗片の糖度や硬さが低下し、食味・形状の両面で商品価値が落ちる。

休眠期間は温度の影響を強く受け、一般に高温ほど休眠が早く明ける傾向がある。そのため、休眠を引き延ばして貯蔵性を保つには、低温での貯蔵が有効である。ただし低温(おおむね0℃付近)では別の生理障害(低温障害)や病害のリスクも生じるため、温度帯の選び方には注意が必要である。

腐敗を起こす微生物と湿度の関係

貯蔵中の腐敗は、主に細菌(軟腐病菌など)や糸状菌(灰色かび病菌、黒かび病菌など)によって起こる。これらの微生物は高湿度条件で増殖しやすく、特に球の表面に結露が生じると発病リスクが急激に高まる。一方で、過度に乾燥した環境は球自体の水分を奪い、重量減少(目減り)や品質低下を招く。したがって貯蔵環境は「高すぎない湿度で結露を防ぎつつ、過乾燥も避ける」という狭い範囲での管理が求められる。具体的な温湿度の目標値は、品種・貯蔵施設の構造によって異なるため、都道府県の栽培基準や普及指導員の助言を参照して設定する。

通気性と呼吸熱

収穫後の球も生きた組織として呼吸を続け、熱と水蒸気を放出する。コンテナや網袋に球を詰めすぎると、内部に呼吸熱と水蒸気がこもり、局所的に高温多湿の環境ができて腐敗の起点となる。風通しの良い置き方(通気性のあるコンテナ、重ねすぎない積み方)は、この呼吸熱と水蒸気を逃がすための物理的な工夫である。

判断の実例

実例1: 倒伏率と収穫時期の判断

状況: 圃場全体の玉ねぎのうち、葉が自然に倒伏している株が約75%に達した。天気予報では3日後から1週間の降雨が続く見込み。

判断: 倒伏率が7〜8割の目安に達しているため、降雨前に収穫を実施する。

理由: 倒伏は首部の養分転流が完了し、球が肥大完了に近づいたサインである。この段階を過ぎて降雨にさらされると、土壌水分の上昇により球が水分を再吸収し、裂球や病害発生のリスクが高まる。倒伏率が低い段階(5割未満など)での収穫は未熟球が多く、貯蔵性が著しく低下するため避ける。

実例2: 予備乾燥中の天候対応

状況: 収穫した玉ねぎを畑に並べて予備乾燥中、翌日から3日間の降雨予報が出た。

判断: 降雨前にコンテナへ移し、屋根のある風通しの良い場所(納屋・ハウス内など)に移動して乾燥を継続する。

理由: 乾燥途中の球が雨に濡れると、外皮の乾燥が中断されるだけでなく、濡れた状態が続くことで病原菌の増殖条件(高湿度)が整ってしまう。屋根下での通気乾燥に切り替えることで、乾燥工程を止めずに病害リスクを避けられる。

実例3: 貯蔵中の庫内湿度管理

状況: 常温貯蔵している玉ねぎの一部に、表面の結露と軟腐の兆候が見られた。庫内の換気は週1回程度しか行っていなかった。

判断: 直ちに腐敗球を除去し、庫内の換気回数を増やして湿度を下げる。可能であれば送風機を設置し、空気の滞留をなくす。

理由: 結露は庫内の温度差や湿度の上昇によって生じ、軟腐病菌などの増殖条件を作る。腐敗球を放置すると周囲の健全球にも病原菌が広がる(二次感染)ため、早期の除去と換気改善が被害の拡大を防ぐ唯一の対策になる。

手順と判断基準

ステップ1: 収穫適期の見極め

  • [ ] 圃場全体の倒伏率を確認し、7〜8割に達しているか(品種・地域差は都道府県の基準で確認)
  • [ ] 直近1週間の降雨予報を確認し、降雨前に収穫できる日程を組む

ステップ2: 予備乾燥(キュアリング)

  • [ ] 畑の上またはコンテナ上で、根と葉を付けたまま数日〜1週間程度乾燥させる
  • [ ] 降雨が予想される場合は屋根下・ハウス内に移動する
  • [ ] 首部が締まり、乾いた感触になっているか確認する

ステップ3: 選別と本乾燥

  • [ ] 外皮が十分に乾燥し、触るとパリッとした音がするか確認する
  • [ ] 傷球・分球・首太り球・病斑のある球を除く
  • [ ] 除いた規格外球は早期消費・加工用に回し、貯蔵には回さない

ステップ4: 貯蔵環境の設定

  • [ ] 風通しの良い冷暗所を確保する(通気性のあるコンテナ・ネット袋を使用)
  • [ ] 積み重ねすぎず、呼吸熱がこもらない配置にする
  • [ ] 低温貯蔵施設を利用する場合は、庫内の温度・湿度を記録する体制を整える

ステップ5: 貯蔵中のモニタリング

  • [ ] 週1回以上、腐敗球・萌芽球を目視確認し除去する
  • [ ] 庫内の温湿度を記録し、結露の兆候があれば換気を強化する
  • [ ] 出荷計画に応じて、貯蔵期間の長い品種から短い品種の順に在庫を管理する

よくある失敗と対策

失敗

なぜまずいか

対策

倒伏前に一斉収穫する

未熟球が多く、首が締まっておらず病原菌が侵入しやすい

倒伏率7〜8割を目安に収穫時期を判断する

濡れたまま球を積み重ねて放置する

呼吸熱と水分がこもり、腐敗菌の増殖条件が整う

通気性のある容器を使い、重ねすぎず乾燥を優先する

貯蔵前の選別を省略する

傷球・病斑球が貯蔵中に腐敗し、周囲の健全球に二次感染する

貯蔵前に必ず選別し、規格外は早期消費・加工用に回す

常温貯蔵のまま長期保管する

休眠が早く明け、萌芽・品質低下が進む

出荷計画に応じて低温貯蔵を併用し、休眠期間を延長する

庫内の換気・記録を怠る

結露や局所的な高湿度に気づかず、被害が拡大してから発覚する

定期的な巡回と温湿度記録を習慣化する

まとめ(判断基準の再掲)

  1. 品種の貯蔵性特性(早生は低い・晩生は高い)を出荷計画に合わせて選定する
  2. 倒伏率7〜8割を収穫適期の目安とし、降雨前の収穫を優先する
  3. 予備乾燥で外皮を乾かし首を締める。降雨時は屋根下へ移動する
  4. 本乾燥後、傷球・分球・首太り球を選別し貯蔵から除く
  5. 貯蔵環境は風通しの良い冷暗所を基本に、必要に応じて低温貯蔵を併用する
  6. 貯蔵中は定期的に腐敗球・萌芽球を除去し、温湿度を記録する

現場実践課題

自分の圃場(または貯蔵施設)で、収穫から貯蔵1か月後までの経過を記録してください。収穫日の倒伏率、乾燥期間、選別で除いた球の割合、貯蔵中の腐敗・萌芽の発生状況を記録し、翌作の品種選定や収穫時期の判断材料とします。

記録例

項目

記録日

内容

倒伏率確認

収穫前日

全体の何%が倒伏していたか

収穫日

-

天候・倒伏率

予備乾燥期間

-

日数・場所(畑上/屋内)

選別結果

本乾燥後

傷球・分球・首太り球の割合(%)

貯蔵環境

貯蔵開始時

場所・温度・湿度の目安

貯蔵1か月後の状態

1か月後

腐敗球数・萌芽球数・健全球数

現場で使える!専門用語ミニ辞書

キュアリング
収穫後の球を乾燥させ、外皮を硬化させて保護層を作る工程。予備乾燥とも呼ばれる
休眠(きゅうみん)
収穫後の球が一定期間、生長を停止している生理的な状態。休眠が明けると萌芽が始まる
萌芽(ほうが)
休眠が明けた球の生長点から芽が伸び出す現象。貯蔵品質の低下を示すサイン
軟腐病(なんぷびょう)
細菌による病害で、球が水浸状に軟化し異臭を発する。高湿度条件で発生しやすい
首太り球(くびふとりきゅう)
首部が十分に締まらず太いままの球。病原菌の侵入口になりやすく貯蔵に向かない
倒伏(とうふく)
玉ねぎの葉が自然に折れて倒れる現象。収穫適期の目安とされる
予冷(よれい)
収穫物を貯蔵・輸送前に急速に冷やし、品温を下げる処理

参考(一次情報)

  • 農研機構 野菜茶業研究部門 タマネギ栽培・貯蔵関連の研究成果情報
  • 都道府県農業試験場・普及指導センターのタマネギ栽培指針・貯蔵マニュアル
  • 農林水産省 有機農業の推進に関する基本的な方針
  • 農林水産省 みどりの食料システム戦略
  • 日本農業技術検定 公式テキスト(生産環境・野菜)

EXERCISE

判断演習

本文の判断基準を使って答えてください。回答すると、選択肢ごとの理由が表示されます。

  1. Q1/2

    本乾燥を終えた玉ねぎを、通気性のあるコンテナではなく段ボール箱に隙間なく詰めて常温の倉庫で保管した。1週間後に確認すると、箱の中心部にある球の一部に軟化と異臭が見られた。

    この状況の原因と今後の対策として最も適切な判断はどれか。

  2. Q2/2

    圃場を巡回したところ、全体の倒伏率は約45%で、天気予報では今後1週間晴天が続く見込みである。出荷スケジュールに余裕を持たせたい新人スタッフから、早めに収穫してはどうかという提案があった。

    この状況で最も適切な判断はどれか。

学習状況を確認しています…

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