代替肉企業、インドで量産へ

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結論:ミセリウム原料企業がインドで量産体制へ

米カリフォルニア拠点のスタートアップ「ベターミートカンパニー」(現BMCイングリディエンツ)が、インド企業とのパートナーシップにより2027年第2四半期をめどに菌糸体(ミセリウム)由来原料の商業規模生産を開始する計画を明らかにした。10万リットル規模の発酵を3回成功させ、初めて7桁(数百万ドル規模)の供給契約も獲得したという。

代替タンパク業界は近年、有力企業が相次いで苦戦する「ブルータルな淘汰」の局面にある。資金力のあった企業でも商業化の壁を越えられない例が目立つなか、同社がどのような戦略で生き残りを図っているのかを整理する。

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背景:バイオマス発酵企業の相次ぐ失速

菌類やタンパク質を発酵で大量生産する「バイオマス発酵」分野では、ここ1年で逆風が続いている。

  • Meati社は昨年事業が破綻
  • Nature's Fynd社は消費者向けブランド事業を縮小し、医薬・代替皮革など高付加価値分野へ転換中
  • ENOUGH Food社は売却や事業再編を含む戦略的選択肢を検討中

こうした中、BMCイングリディエンツは生産設備を自社で持たず、インドのパートナー企業の発酵設備を活用する「アセットライト(資産軽量型)」の拡大戦略を取り、現時点では事業を継続できているという。

技術面:2つの製品プラットフォーム

同社は、規制当局の承認をインド・米国・カナダ・シンガポールで取得済みで、2つの製品ラインを展開している。

  • Rhiza Tex:食肉や植物由来代替肉に混ぜるテクスチャー付きミセリウム原料。飽和脂肪やカロリーを抑えつつ食物繊維とタンパク質を補強でき、保水・保油性により歩留まり向上や調理ロス低減にも寄与するとされる。
  • Rhiza Pro:乾燥重量100gあたりタンパク質51gを含む粉末ミセリウム原料。プロテインバーやシェイクなど向けで、価格高騰が続くホエイプロテインの代替として製造各社の関心を集めているという。

新たに獲得した7桁契約はRhiza Pro向けで、同社CEOのポール・シャピロ氏は「当初想定していたより、この原料が対応できる市場ははるかに大きいことが分かってきた」と述べている。

既存のTVP(テクスチャード植物性タンパク)との比較

食肉増量材として従来使われてきた大豆由来のTVPと比べ、Rhiza Texにはいくつかの違いがあるとシャピロ氏は説明する。

項目

TVP(大豆由来)

Rhiza Tex

主な原料

大豆

菌糸体(ミセリウム)

アレルゲン表示

必要な場合が多い

主要アレルゲンに該当しないとされる

配合可能率の目安

10〜15%

20〜33%

風味の傾向

風味に影響しやすい

比較的ニュートラル

また米国では食品表示ルールが改正され、従来「ニューロスポラ・クラッサ・マイコプロテイン」と記載する必要があった原料を、「ミセリウム(mycelium)」というより消費者に伝わりやすい名称で表示できるようになった点も、採用を後押しする材料になっているという。

経済性:食肉メーカーにとっての「グリーン割引」

シャピロ氏は、Rhiza Texを食肉に配合することで、ESG(環境・社会・ガバナンス)目標の達成や飽和脂肪・ナトリウムの削減、食物繊維の増強につながるだけでなく、コスト面でもメリットがあると強調する。「多くの場合、環境配慮型の原料には割高な『グリーンプレミアム』が付きものだが、我々の場合はむしろコストを下げる『グリーンディスカウント』になる」と述べた。

規模拡大:インドでの大規模発酵がカギ

工業規模の発酵設備は、異なる微生物や工程に対応させるために大がかりな改修が必要になることが多い。同社は長年にわたり技術移転を進め、10万リットル規模のニューロスポラ・クラッサ発酵を3回成功させたとしており、シャピロ氏は「これほど大型の槽でニューロスポラ・クラッサを発酵させた例はこれまでなかった」と、リスク低減の成果を強調している。

なお、Rhiza Proにはタンパク質・食物繊維・鉄・カリウム・亜鉛に加え、スペルミジンやエルゴチオネインといった、長寿研究分野で注目される成分も含まれるという。マサチューセッツ大学アマースト校との共同研究では、Rhiza Proを焼き菓子の卵代替として使う検証も進められており、論文は査読中で未発表の段階にある。

まとめ

BMCイングリディエンツの事例は、設備投資を抑えたパートナー型の生産モデルによって、資金力に乏しいアグリフードテック系スタートアップでも商業規模への橋渡しが可能になりうることを示している。日本の農業ベンチャーやアグリテック企業が規模拡大を目指す場合も、自社で大型発酵設備やプラントを抱え込むのではなく、既存設備を持つ事業者との提携によって初期投資を抑えつつ技術移転を進める発想は参考になりうる。ただし、発酵プロセスの技術移転には高度な専門知識が必要で、原料の規制対応や表示ルールの違いも国ごとに異なるため、海外事例をそのまま適用するにはコストとITリテラシー両面でのハードルがある点は踏まえておきたい。

代替タンパク業界では既に複数の有力企業が事業縮小や売却検討に追い込まれており、この分野への参入・投資判断には業界全体の構造的な厳しさも織り込む必要があるだろう。あなたの現場では、こうした原料の価格や調達動向をどう捉えていますか。あなたの現場の声を、記事下のアグリコメで聞かせてください。

現場で使える!専門用語ミニ辞書

ミセリウム(菌糸体)
キノコなどの菌類が土壌中などに広げる糸状の構造体で、発酵によってタンパク質豊富な食品原料として加工できる。代替肉・代替乳製品の原料として注目される。
発酵(はっこう)
微生物や菌類が糖などを分解してタンパク質やその他の物質を生成する工程。今回のような大規模生産では、発酵槽の容量(リットル数)が量産化の指標になる。
TVP(テクスチャード植物性タンパク/大豆たんぱく)
大豆などを加工して肉のような食感を持たせた原料で、食肉の増量材として従来広く使われてきた。アレルゲン表示が必要になる場合が多い。
アセットライト(資産軽量型)
自社で工場や設備を大規模に保有せず、既存の生産設備を持つパートナー企業を活用して事業を拡大する経営手法。初期投資を抑えられる利点がある。
ESG
環境(Environment)・社会(Social)・ガバナンス(Governance)の頭文字を取った略語で、企業の持続可能性や社会的責任を評価する際の指標として用いられる。
スペルミジン/エルゴチオネイン
細胞の機能維持に関わるとされる天然化合物で、近年「長寿(ロンジェビティ)」研究分野で注目されている成分。

参考

Better Meat Co targets large-scale production in India in Q2, 2027 amid brutal mycoprotein shakeout(agfundernews.com)

アグリコメ 1

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  • 編集部ノウカラ編集部

    【編集部より】今回の菌糸体原料の量産計画について、現場の皆さんは原料調達コストや新素材への切り替えをどう検討していますか?取り扱う品目や立場も教えてください。

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