新甘味料5-KDF、米量産へ交渉

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りんごや梨の加工残渣(搾りかす)を原料に、砂糖の代替となる低カロリー希少糖を作る——オランダのフードテック企業Fooditive(フーディティブ)が、新甘味料「5-ケト-D-フルクトース(5-KDF、通称ケトース)」の米国市場での商業化に向け、大手原料サプライヤーと交渉を進めていることが分かった。米FDA(食品医薬品局)へのGRAS(一般に安全と認められる)通知の審査結果を待つ段階で、実用化の可否は今後数カ月の動向にかかっている。

既に高甘味度甘味料のブラゼインなどが話題になる一方、砂糖のボリューム感や焼き色・保存性まで再現できる低カロリー甘味料は選択肢が少ない。5-KDFはその空白を埋える候補として注目されているが、価格競争力と表示ルールの扱い次第で普及の速度は大きく変わる。

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5-KDFとは何か 技術と経済性のポイント

技術:果物の搾りかすを発酵でブドウ糖から変換

5-KDFはワインや酢、はちみつなどに微量に含まれる天然の希少糖。Fooditiveは、ビールから分離した非遺伝子組み換えの細菌「Gluconobacter oxydans」を使い、果糖(フルクトース)を酵素的バイオコンバージョン(酵素反応による物質変換)する方法で製造する。細菌は加工助剤としてのみ機能し、精製工程で検出限界以下まで除去される。

原料となる果糖は、りんごや梨などの果汁加工時に出る搾りかす(ポマース)から調達できる可能性があるという。CEOのモアヤド・アブショケディム氏は「りんごの搾りかすはジュース用に既に洗浄・殺菌済みなので、前処理をほとんど必要としない」と説明する。

経済性:自社製造を持たないライセンス戦略

Fooditiveは自社で製造設備を持たず、既存の甘味料メーカーに技術供与し、製造と市場投入を任せるライセンス・共同開発モデルを採用する。1社に独占権を与えるのではなく、用途ごとに複数のメーカーとライセンス契約を結ぶ方針で、米国内で2〜3社との提携を視野に入れる。

「甘味料市場に既にいる企業の販路と顧客基盤を使ってもらう。競争ではなく協業として捉えてほしい」とアブショケディム氏は述べる。製パン原料大手のプラトスが同社に戦略投資を行っており、焼き菓子分野での実用化を後押ししている。

規模:75立方メートルの発酵システムで3カ月稼働実証

イタリアの受託製造拠点で、りんご・梨の搾りかすを原料に75立方メートルの発酵システムを約3カ月稼働させ、品質管理の実証を終えた。同社はこの結果をもとに200立方メートル規模への拡大が可能とみている。アブショケディム氏は「量産段階に入れば、他の低カロリーバルク甘味料と価格競争できる」との見通しを示す。

他の低カロリー甘味料との比較

| 甘味料 | カロリー(kcal/g) | 砂糖比の甘さ | 添加糖表示の扱い | |---|---|---| | 砂糖(ショ糖) | 4 | 100% | 対象 | | 5-KDF(ケトース) | 1.4 | 約70% | FDA審査待ち・未確定 | | アルロース | 0.4 | 非公開(本文記載なし) | 除外対象(条件付き) | | タガトース | 1.5 | 92%(参考情報) | 除外対象(条件付き) |

※アルロース・タガトースの数値は本文で言及された範囲のみ記載。5-KDFは消化不良を起こしにくいとされる点もポリオール系甘味料との違いとして挙げられている。

FDA審査と「添加糖」表示という壁

Fooditiveは2024年に自己認証によるGRAS判断を取得し、2026年1月に正式なGRAS通知をFDAへ提出した。審査には同社がこの8年間かけて積み上げてきた毒性試験・安全性データ・製品検証の結果が使われている。

ただし商業化における論点はもう一つある。「添加糖(added sugars)」表示からの除外が認められるかどうかだ。アルロースと、より最近ではタガトースがこの除外対象として認められているが、5-KDFが同様の扱いを受けられるかは未確定。アブショケディム氏は「多くの食品メーカーは栄養成分表示に糖類のグラム数を載せたくない、あるいは『添加糖ゼロ』を謳いたいと考えている。これは別の審査プロセスであり、FDAの判断が出るまでは推測を控えたい」と慎重な姿勢を示す。

米国展開の焦点:果樹加工が盛んなニューヨーク州北部

Fooditiveは米ニューヨーク州北部(アップステートNY)での事業拠点設立を検討している。2026年Grow-NYコンペティションの最終候補20社に選ばれ、ロチェスター地域でコーネル大学と連携しながら事業を進める計画だ。同地域を選んだ理由についてアブショケディム氏は「りんご加工の副産物が大量にあり、各企業がその処理方法を模索しているから」と説明する。

今後1年で3〜4件の用途別試験を市場で実施し、商用処方での性能データを集める予定という。同社はこのほか、遺伝子組み換え大腸菌を使った精密発酵(微生物に目的物質を作らせる発酵技術)によるカゼインタンパク質の開発も進めており、大手消費財メーカーと複数年の供給契約を結んでいるとしている。

日本のアグリテック・フードテックへの示唆

Fooditiveの事例は、果樹加工の副産物(搾りかす)を原料とする点、自社製造を持たずライセンス供与で収益化する点の2つで、日本のアグリテック・フードテック系スタートアップにとって参考になる構造を持つ。りんご・梨・ぶどうなど果樹産地を抱える国内の生産法人や加工業者にとって、搾りかすの廃棄コスト削減や新たな収益源となる可能性は検討に値する。

ただし応用には前提条件がある。第一に、Fooditiveは8年間の毒性試験・安全性データ構築を経てようやくFDA審査段階に至っており、新規甘味料の規制対応には長期の投資と専門知見が必要になる。第二に、たとえ技術が確立しても、添加糖表示など規制上の扱いが未確定な段階では、食品メーカー側の採用判断が先送りされるリスクがある。国内で同様の希少糖開発を検討する場合も、食品表示基準や安全性評価にかかる期間・コストを事業計画に織り込む必要がある。第三に、Fooditiveのようにライセンス供与モデルを選ぶ場合、自社に発酵・精製設備を持たない分、初期投資は抑えられるが、既存の原料メーカーとの提携交渉力や技術移転の体制構築が経営課題になる。ITリテラシーの観点では、発酵プロセスの品質管理データを定量的に示せる体制(原文で言及された実証運転データの蓄積のような取り組み)が、提携先との交渉を有利に進める材料になり得る。

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まとめ

5-KDFは、果物の加工残渣を原料に低カロリーで砂糖に近い機能性を再現する希少糖として、FDAの審査結果と添加糖表示の扱いが今後の普及を左右する段階にある。日本でも果樹産地の副産物活用や規制対応のコスト構造を参考に、自社の事業モデルに置き換えて検討する価値があるだろう。あなたの現場では、果物や野菜の加工残渣はどのように活用されていますか。あなたの現場の声を、記事下のアグリコメで聞かせてください。

現場で使える!専門用語ミニ辞書

GRAS(グラス・一般に安全と認められる物質)
米国で食品添加物が安全と公的に認められる基準のこと。新しい甘味料や食品成分を米国で販売する際に必要な手続きの一つ。
希少糖
自然界にごく微量しか存在しない単糖の総称。砂糖の代替として、低カロリー・低血糖負荷といった機能性が注目されている。
酵素的バイオコンバージョン
微生物や酵素の働きを利用して、ある物質を別の物質に変換する製造方法。化学合成より穏やかな条件で物質を作れる点が特徴。
添加糖表示(added sugars labeling)
加工時に加えられた糖類を栄養成分表示に記載するルール。表示の有無が「無添加糖」などの商品訴求に直結するため、食品メーカーにとって重要な論点になる。
アルロース
砂糖に似た甘さを持つ希少糖の一種で、米国では一定条件下で添加糖表示から除外されている。
タガトース
砂糖に近い甘さとカロリーの低さを両立する希少糖で、近年米国で添加糖表示の除外対象に加わった。
精密発酵
微生物に目的のタンパク質などを生産させる発酵技術。代替タンパク質や機能性成分の製造に応用される。

参考

Fooditive in advanced talks to commercialize low-cal rare sugar 5-KDF(AgFunderNews)

アグリコメ 1

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  • 編集部ノウカラ編集部

    【編集部より】読者の皆さんの地域では、りんごや梨などの加工残渣(搾りかす)はどのように活用・処分されていますか。廃棄コストや新たな利用先の模索について、現場の実感を教えてください。

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