ロレアル、マイクロドラマで勝負
本サイトはアフィリエイトプログラムに参加しており、記事内のリンク経由で商品やサービスが購入された場合、運営者が報酬を受け取ることがあります。掲載内容は公開情報をもとに独自に構成しています。
広告ではなく「物語」で消費者の時間を奪いにいく。ロレアル傘下のUrban Decayが縦型ショートドラマで短期間に380万回再生を記録しました。この記事では、なぜこの手法が機能したのか、そして日本のスタートアップや農業ベンチャーのマーケティングにどう応用できるかを整理します。
何が起きたか:6話のドラマが5日で380万回再生
Urban Decayは2026年10月24日、縦型ショートドラマ専門プラットフォーム「ReelShort」で「Ghost Hunter Hotline」を公開しました。全6話、各話数分の構成で、主人公ゾーイが恋愛相手に突然連絡を絶たれる「ゴースティング」に仕返しするストーリーの中に、同社の「Ghosting Spray」という製品を自然に登場させています。
公開後5日間で380万回再生を記録し、ReelShort内の再生数ランキングで2位につけました。ハロウィーンの季節性と、現代の恋愛事情への皮肉を効かせた作りが、プラットフォームの既存ユーザー層と噛み合ったとみられます。
従来の広告とは異なる制作体制
今回特徴的なのは、外部の広告代理店を使わず、ロレアルがReelShortと直接組んで企画・制作・配信までを行った点です。ReelShortの運営元Crazy Maple Studioは、業界分析によると今年1,000億円規模(10億ドル超)の売上を見込む、マイクロドラマ分野の主要プラットフォームとされています。
ロレアルUSAの最高デジタル・マーケティング責任者(CDMO)であるハン・ウェン氏は、制作期間が約4週間だったと述べています。従来型のCM制作に比べて大幅に短く、トレンドの移り変わりが速い現在のマーケティング環境に合わせた判断だとしています。
なぜ機能したか:構造を分解する
1. ブランドと企画の相性を見極めた
数十ブランドを抱えるロレアルの中で、Urban Decayが選ばれたのには理由があります。1990年代半ばにロサンゼルスで生まれ、「尖った」「無難ではない」イメージを打ち出すラグジュアリーブランドであり、ハロウィーンは同ブランドにとって重要な商戦期です。2012年にロレアルが買収した経緯も含め、縦型ドラマというやや攻めたフォーマットと世界観が合致していました。
2. 「製品訴求」より「視聴者の時間」を優先した
ウェン氏は、クリエイターエコノミーの時代において「まず視聴者ありき、エンターテインメントありきで考える必要がある」と語っています。製品メッセージやブランドストーリーを前面に出す旧来型の広告思考ではなく、視聴者が自発的に見たくなるコンテンツの中に製品を溶け込ませる発想です。
3. プラットフォームの知見をそのまま活用した
外部制作会社を介さずプラットフォームと直接組んだことで、ReelShortが持つ「何が視聴者にウケるか」という知見をそのまま企画に反映できた点も見逃せません。これは、少人数のチームでスピード感を持って試作・検証する体制に近い発想です。
過去の失敗も踏まえた判断
ウェン氏は、ロレアルの新興ソーシャル動画への賭けがすべて成功してきたわけではないことも認めています。Twitter傘下で既に終了したライブ配信サービスのPeriscope、コロナ禍で一時的に流行したBeRealなどを例に挙げました。それでもマイクロドラマについては、中国で既に主流化し、米国でもモバイル中心の視聴行動が広がる中で定着の可能性があると前向きな見方を示しています。
従来型広告とマイクロドラマの比較
項目 | 従来型CM・広告キャンペーン | マイクロドラマ(今回の事例) |
|---|---|---|
制作期間 | 数ヶ月規模 | 約4週間 |
制作体制 | 外部代理店中心 | プラットフォームと直接制作 |
訴求の軸 | 製品メッセージ・ブランドストーリー | エンターテインメント優先 |
配信先 | 自社チャネル・従来メディア | マイクロドラマ専門プラットフォーム |
評価指標 | ブランド想起・CVRなど | 再生数・ランキング順位 |
スタートアップ・農業ベンチャーへの応用視点
この事例は化粧品大手の話であり、そのまま農業ベンチャーに当てはまるわけではありません。ただし「制作を小さく速く回す」「プラットフォームの知見を借りる」という構造は、資金力に限りがある事業体にこそ参考になる部分があります。
- 自社でTikTokやYouTube ショートの縦型フォーマットを使い、商品やサービスを物語の中に溶け込ませる企画は、代理店を介さずとも少人数で試作できる可能性があります
- 「製品説明」より先に「視聴者が見たくなる展開」を設計する発想は、D2Cで農産物やアグリテック製品を直接消費者に届けるブランドにも応用しやすい考え方です
- 一方で、縦型ドラマ専門プラットフォームでの配信効果(380万回再生など)は海外の大手ブランド事例であり、同じ規模の再生数を日本の小規模事業者が得られる保証はありません。費用対効果の検証には小さく試す姿勢が必要です
導入のハードルとしては、動画制作・編集のスキルを持つ人材の確保、継続的な企画立案の工数、そして「製品を直接売り込まない」コンテンツに対する社内の合意形成が挙げられます。まずは低コストで小規模なテストから始め、再生数や反応を見ながら投資判断をしていく進め方が現実的でしょう。
まとめ
ロレアルのUrban Decayは、縦型ショートドラマという新しいフォーマットで、製品説明よりエンターテインメントを優先する発想を試し、5日間で380万回再生という結果を得ました。外部代理店を介さずプラットフォームと直接制作し、約4週間という短期間で仕上げた点は、資金や人員が限られるスタートアップや農業ベンチャーにとっても、コンテンツ制作の速度感や体制づくりの参考になり得ます。ただし海外大手ブランドの事例であり、同じ再生数や効果を小規模事業者が再現できる保証はない点には注意が必要です。あなたの現場では、商品やサービスを「物語」として伝える余地はありますか。あなたの現場の声を、記事下のアグリコメで聞かせてください。
現場で使える!専門用語ミニ辞書
- マイクロドラマ(micro drama)
- 数分単位の短いエピソードを連続させる縦型のドラマ形式。TikTokなど短尺動画の視聴習慣を前提に設計されている。
- 縦型動画(たてがたどうが・バーティカルビデオ)
- スマートフォンを縦に持ったまま視聴できるよう縦長で制作された動画。横型CMより制作・視聴の導線が異なる。
- ReelShort
- Crazy Maple Studioが運営するマイクロドラマ専門の配信プラットフォーム。短編の縦型ドラマを連続配信する仕組みを持つ。
- CDMO(最高デジタル・マーケティング責任者)
- 企業のデジタル施策とマーケティング全体を統括する役職。本記事ではロレアルUSAのハン・ウェン氏が務める。
- クリフハンガー(cliffhanger)
- 物語の続きが気になる場面で区切る演出手法。次話への視聴継続を促すために使われる。
- オーガニック(organic)
- 広告出稿に頼らず、自然な形でユーザーがコンテンツに反応・拡散すること。
参考
L’Oréal’s evolving microdrama strategy puts entertainment over product - Marketing Dive
共感・コメントは無料会員限定です
アグリコメ 1
現場のプロの視点で、この記事への意見や経験を共有しましょう。
読むだけで終わらせず、現場の声を共有して議論に加わりませんか。登録は無料です。
編集部ノウカラ編集部
【編集部より】皆さんの事業でも、縦型のショート動画やドラマ形式のコンテンツを試したことはありますか?実施した際の反応や、制作のハードルになった点があれば教えてください。