バイエル新興と生物農薬開発
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大豆・コーヒー・キャッサバなど基幹作物を抱えるブラジルで、化学農薬に頼らない病害対策の開発競争が本格化している。独バイエルとブラジルのバイオテック企業IdeeLabは、12カ月間のR&D提携を結び、生物由来の殺菌剤(バイオファンジサイド)を共同開発すると発表した。背景には、従来の化学殺菌剤に対する病原菌の耐性拡大という、世界中の生産現場が直面する共通課題がある。
バイエルとIdeeLab、何を開発するのか
両社はまだ標的とする病原菌の種類を公表していないが、ブラジルの主要作物は複数の糸状菌(カビ)由来の病害に悩まされている。
- 大豆:アジアさび病、白絹病(ホワイトモールド)、ターゲットスポット
- キャッサバ:魔女ほうき病
- コーヒー:さび病、褐色円星病、ターゲットスポット
こうした病害に対して使われる化学殺菌剤は、使用を重ねるほど病原菌側の薬剤抵抗性(耐性)が強まりやすく、効果を維持するために散布回数を増やす必要が出てくる。結果として生産コストが上昇するというジレンマが、ブラジルの生産者を悩ませてきた。バイエルのBenoit Hartmann氏(Crop Science部門)は「生物農薬は、作物保護の選択肢を広げ、既存の防除体系を補完する手段の一つだ」と説明する。
IdeeLabとは何者か
IdeeLabは、他社の生物農薬の研究・試験・商業化を請け負う「CDMO(受託開発製造組織)」で、既に30製品以上を市場に投入し、シンジェンタやICLを含む60社以上と提携しているという。同社の強みは、熱帯地域の病害虫に特化して収集した独自の微生物コレクションにある。創業者兼CEOのRonaldo Dalio氏は「熱帯農業にすでに存在するバクテリアや代謝物を研究の起点にすることで、研究開発から実用化までのプロセスを効率化できる」と語る。
今回の提携でIdeeLabは、ブラジル国内のR&D拠点を活用し、製品の効果や保存期間(シェルフライフ)を左右するバイオプロセス工学の知見を提供する。一方バイエルは、すでに3つの候補がブラジルで圃場試験(実際の畑で行う試験)段階にあり、IdeeLab側の微生物資源によって新たな候補を獲得できる見込みだ。
なぜ今、生物農薬への投資が加速するのか
今回の提携発表は、バイエルが「2030年までにラテンアメリカで17の新しい生物農薬製品を投入する」と発表した同じ週に明らかになった。ブラジルは生産者の受容度が高く規制環境も比較的整っていることから、生物農薬市場の先進地域とされる。特に特殊作物(野菜・果樹など)での採用が主流な他地域と異なり、ブラジルではトウモロコシや大豆といった大規模な土地利用型作物(ロークロップ)での採用が先行している点が特徴だ。
化学殺菌剤と生物農薬の違い(整理)
項目 | 化学殺菌剤 | 生物農薬(バイオファンジサイド) |
|---|---|---|
作用機序 | 化学合成成分で病原菌を直接阻害 | 微生物・代謝物を用いて病害を抑制 |
課題 | 連用による薬剤抵抗性の拡大 | 効果の安定性・保存期間の確保が開発課題 |
位置づけ | 防除体系の主軸 | 既存体系を補完する選択肢として統合 |
両社は今後12カ月で成果を示し、可能であれば製品化につなげる計画だが、Dalio氏は「登録手続きや追加の圃場試験など、商業化に向けた作業はこの先も続く」とし、既に次のプロジェクトの協議も始まっていると明かしている。
まとめ
今回の提携は、化学農薬への耐性拡大という共通課題に対し、大手アグリ企業と地場バイオテック企業が研究開発を分業・加速させる動きとして注目される。日本の農業スタートアップやアグリテックベンチャーにとっても、自社単独で微生物資源の探索から製剤化、規制対応までを担うのは資金・人材面でハードルが高い。IdeeLabのようなCDMO型のパートナーと組み、開発工程の一部(バイオプロセス工学や製剤設計など)を外部委託する発想は、限られた経営資源で製品化までのスピードを上げる一つの選択肢になり得る。ただし、今回の事例はあくまでブラジルの規制・気候・病害事情に最適化されたものであり、日本国内での病害対策にそのまま応用できるとは限らない点には留意が必要だ。導入を検討する際は、対象病害の特定、既存の薬剤抵抗性の実態把握、そして登録・許認可にかかる期間とコストを事前に見積もることが欠かせない。
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現場で使える!専門用語ミニ辞書
- バイオファンジサイド(生物由来殺菌剤)
- 微生物や天然由来の成分を使って病害を抑える資材のこと。化学殺菌剤の代替・補完として使われる。
- CDMO(Contract Development and Manufacturing Organization・受託開発製造組織)
- 他社に代わって製品の研究開発や製造を請け負う企業形態。自社で設備を持たずに開発を進めたい企業が活用する。
- 薬剤抵抗性(耐性)
- 同じ薬剤を繰り返し使うことで、病原菌がその薬剤に対して効きにくくなる現象。散布回数の増加やコスト上昇の原因になる。
- 圃場試験
- 実験室ではなく実際の畑で行う試験のこと。製品化の前段階として、現場での効果や安全性を確認するために実施する。
- 微生物コレクション
- 研究開発に使うために収集・保存された微生物の集まり。新しい生物農薬や資材の原料探索の基盤になる。
参考
Bayer and IdeeLab partner to develop biofungicides for Brazilian farmers (AgFunderNews)
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アグリコメ 1
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編集部ノウカラ編集部
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