カカオ高騰、代替チョコ浸透

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導入:カカオ危機が生んだ「代替チョコ」という選択肢

2024年12月、カカオ価格が史上最高値圏まで急騰した。その後やや落ち着いたものの、以前の水準には戻っていない。世界のカカオの75%は西アフリカの2カ国に依存しており、気候変動や病害、違法採掘、投機マネーの流入など複数の要因が重なり、供給は構造的に不安定化している。

こうした中、英国発のフードテック企業Win-Winは、カカオを使わずにチョコレートに近い食感・風味を再現する原料を開発し、欧州で商業化を進めている。カカオ豆という「コモディティ(市況によって価格が大きく変動する一次産品)」への依存度を下げたい菓子・食品メーカーにとって、調達戦略の選択肢の一つになり得る動きだ。

一方で、カカオ生産を支える農家の生計や、伝統的なチョコレートの価値をどう守るかという論点も残る。価格高騰は農家にとって収入増にもつながり得る半面、原料高は中小の菓子メーカーの経営を直撃する。安さだけを追う代替品の拡大と、カカオ農家の適正な収益確保は、単純に対立する話ではなく両立を模索すべき課題だ。

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Win-Winが解決しようとしている課題

Win-Winの担当者マーク・ゴルダー氏によると、同社が着目したのは「世界が欲しがるチョコレートの量」と「世界が生産できるカカオの量」のギャップだ。気候変動の影響で西アフリカの収量は減少傾向にあり、構造的な供給不足が続いているという。

  • 世界のカカオ生産の75%は西アフリカの2カ国に集中
  • 気候変動・病害・違法採掘・高齢化した木々などが収量を圧迫
  • 投機マネーの流入が価格変動(ボラティリティ)を増幅

ゴルダー氏は「カカオ農家に公正な対価を払うなら、カカオ由来の本物のチョコレートは今後ますますプレミアム化していく。それ以外の需要を満たすのがWin-Winだ」と説明する。

技術:カカオの代わりに「米」を発酵

Win-Winの核となるのは、カカオの代わりに別の植物性原料(現在は主に米)を発酵させる技術だ。従来のチョコレート製造では、カカオ豆自体を発酵させる工程があるが、Win-Winはこの最初の工程だけを置き換え、それ以降の加工・成形プロセスは従来のチョコレート製造と同じ設備・工程をそのまま使えるという。

技術面でのポイント

  • 発酵に使う植物性原料は地域ごとに調達可能なものへ切り替えられる設計
  • 既存のチョコレート製造工場(コーマン=受託製造パートナー)をそのまま活用できる
  • エンローブ(コーティング)、溶融、焼成耐性チップなど従来チョコと同じ加工適性を確認済みと説明

経済性・環境面でのポイント

  • 従来品比でCO2排出量が80%低い
  • 従来品比で水使用量(ウォーターフットプリント)も80%低い
  • 価格面では既存の大手チョコレート生産者には及ばないものの「競争力のある水準」と説明

従来のチョコレートとWin-Winの比較

項目

従来のカカオ由来チョコレート

Win-Win(代替原料)

主原料

カカオ豆

米など植物性原料(発酵)

価格の安定性

市況で大きく変動

比較的安定していると説明

CO2排出量

基準

約80%低いと説明

水使用量

基準

約80%低いと説明

製造設備

専用設備

既存チョコ工場を転用可能と説明

表示上の呼称

「チョコレート」表示可

市場により「チョコレート」と表示できない場合あり

(注)数値はWin-Win社の説明に基づく。第三者機関による独立した検証結果かどうかは原文からは確認できない。

「チョコレート」と名乗れない制約

Win-Winの原料は、多くの市場で定められている「スタンダード・オブ・アイデンティティ(規格表示基準。製品名を名乗るために必要な最低限のカカオ由来成分比率などを定めた規格)」を満たさないため、単体では「チョコレート」と表示できない。ただし一部のレシピでは、本物のチョコレートと一定割合をブレンドすることで、製品名に「チョコレート」を含められるケースもあるという。

ビジネスモデル:B2Bに特化し、既存流通網を活用

Win-Winは消費者向けブランドを自社で展開せず、原料サプライヤーとしてB2B(企業間取引)に徹する方針を明言している。理由として、消費者ブランド構築には食品原料開発とは異なる専門性・人材・資金が必要であり、その分野を得意とするパートナー企業と組む方が合理的だと説明する。

現在は英国・欧州の流通業者を通じて商業化・販売を行っている段階で、今後はパートナーシップを軸に供給網を広げる方針だという。

価格変動そのものが経営課題になっている

興味深いのは、ゴルダー氏が「カカオ価格が上がるときだけでなく、下がるときも顧客は同じように困惑する」と指摘している点だ。価格の方向性そのものより、先が読めない「ボラティリティ(変動の大きさ)」こそが、調達計画や価格設定を立てにくくする最大の要因だという。大企業は先を見据えた対応力を持つ一方、中小の食品メーカーはその余力が乏しいとの見方も示されている。

まとめ

Win-Winの事例は、海外のフードテック企業が、気候変動由来の原料価格高騰という「調達リスク」に対し、代替原料と既存製造設備の組み合わせで応える一つのモデルだ。日本の農業ベンチャー・アグリテックスタートアップにとっても、示唆は小さくない。

応用を検討する際の前提は、(1)既存の製造・流通インフラを置き換えずに活用できる技術設計にできるか、(2)B2B特化かB2C展開かという事業モデルの選択、(3)原料の地域調達による輸送コスト・環境負荷の圧縮余地、の3点を経営・技術の両面から精査することだ。ITリテラシーの面では、発酵プロセスの品質管理や環境負荷データの算出・開示体制を整えられるかが実務上のハードルになるとみられる。ただし本記事で示した数値(排出量削減率やコスト競争力)はあくまで同社の説明であり、日本国内での再現性や検証結果は本記事の原文からは確認できない点には留意が必要だ。

あなたの現場では、原料価格の変動にどう備えていますか。あなたの現場の声を、記事下のアグリコメで聞かせてください。

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現場で使える!専門用語ミニ辞書

コモディティ(商品市況・一次産品)
カカオ豆のように市場価格が需給や投機で大きく変動する一次産品のこと。調達計画を立てる際に価格変動リスクを見積もる基準になる。
カーボンフットプリント(CO2排出量の指標)
製品や製造工程全体で排出される温室効果ガスの量を示す指標。原料切り替えの環境効果を比較する際に使われる。
ウォーターフットプリント(水使用量の指標)
製品の生産・加工に使われる水の総量を示す指標。環境負荷の比較軸としてCO2排出量と並んで使われる。
コーマン(co-man/受託製造パートナー)
自社工場を持たずに製造を委託する契約製造パートナーのこと。新原料でも既存設備を転用できれば立ち上げ期間を短縮できる。
スタンダード・オブ・アイデンティティ(規格表示基準)
食品の名称を名乗るために必要な最低限の成分比率などを定めた規格。代替原料が「チョコレート」と表示できるかどうかを左右する。
B2B(企業間取引)
消費者に直接販売せず、企業向けに原料や中間製品を供給する取引形態。ブランド構築コストを抑えつつ事業を拡大する手段の一つ。

参考

Mark Golder: 'Cacao-based chocolate will become increasingly premium, and for everything else, there's Win-Win'(agfundernews.com)

アグリコメ 1

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  • 編集部ノウカラ編集部

    【編集部より】カカオや輸入原料の価格変動について、現場の皆さんは調達計画にどう影響を感じていますか。扱っている品目や規模もあわせて教えてください。

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